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【正論】新しい対立を生む米露関係 北大名誉教授、拓殖大学客員教授・木村汎 (2/3ページ)

2008.5.5 04:12
このニュースのトピックス正論

ゲームのルールに違反

 しかし厳密にいうと、プーチン政権下では、民主主義が拠って立つ価値や原則(三権分立、地方自治、メディアの自由など)は順守されていない。ブッシュ政権は、それを民主主義からの後退として批判する。が、プーチン政権は、秩序や安定のほうがロシアにとりはるかに重要な価値と反論する。あまつさえ、「主権民主主義」概念を発明して、ロシア土着の「政治的DNA(遺伝子)」に適合したロシア版民主主義を実施中と抗弁する。

 仮に一歩譲って、人々の間に価値観の違いがあろうとも、ゲームのルールを守るかぎり、議会制民主主義は成立する。欧米社会はこう考える。ところがロシア人は、法やルールは状況の変化とともに変わるものとみなす。彼らは極端にいえば、「法律とは、電柱のようにすり抜けてゆくべきもの」(ロシアの諺(ことわざ))とすら考える。

 たしかに、次期大統領のメドベージェフは法律の専門家で、現ロシアに蔓延(まんえん)中の「法的虚無主義」に対する闘いを、選挙スローガンに掲げた。だが、ガスプロム会長としての彼が実際行ってきたことを想起すると、この公約は説得力を失う。彼は、エリツィン前政権が合意したはずの「生産物分与協定」を事実上反古(ほご)にして、外資系企業から「サハリン2」プロジェクトなどの主導権を奪った人物だからである。

 もとより、米露両国が一定の利害を共有していることは、間違いない。例えば、反テロ共闘、核不拡散、エネルギー資源売買などの分野においては、他方を必要とし他を敵には回しえない。とはいえ、一体利害の一致だけで価値やルールの相違を克服できるものだろうか。疑問である。

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