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【正論】新しい対立を生む米露関係 北大名誉教授、拓殖大学客員教授・木村汎 (1/3ページ)
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ロシアの特異な価値観
米国とロシアのお別れサミットは、儀礼的なものに終わった。4月初めブッシュ米大統領はロシア南部ソチに赴いたものの、プーチン露大統領との間で実質的な合意には達しえなかった。北大西洋条約機構(NATO)拡大、ミサイル防衛などをめぐる米露間の溝はあまりにも広く、突破口はおろか歩み寄りの余地さえ見出しえなかった。
米軍のイラク武力行使以来とみに顕著となってきた米露間の「新しい対立段階」は改善の目途がつけられないまま、次期政権へと引き継がれるもようである。このような対立状態に注目して、それを「新冷戦」と名づけるべきか。イエス、ノー両様に答えうる。「冷戦」は、比喩(ひゆ)である。現実に銃火を交える熱戦にたいして「戦争でも平和でもない厳しい対立状態」を指す。もともと学術的な定義を欠く用語であるために、一体それが何時はじまり、何時終了したかさえ、厳密には述べえない。今日すでに「新冷戦」が開始しているともいえるし、それはまだ時期尚早の誇大表現ともいえる。
かつて冷戦の最中、米ソ超大国は、互いに相いれないイデオロギーを信奉していた。米国は民主主義、ソ連は共産主義。このイデオロギー上の差にもとづいて、東西対立ブロックが形成されていた。たしかにこの点では、現在事態は改善されている。ロシアはその後共産主義思想を放棄し、民主主義への移行を宣言したからである。ロシアも中国も、よもや上海協力機構をNATOに対抗する軍事ブロックへ格上げしようとは考えていないだろう。

