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【記者ブログ】『殺劫』を読んで上野の森美術館「聖地チベット展」に行く(社告ではない) 福島香織 (1/5ページ)

2009.11.8 02:58
このニュースのトピックス福島香織の記者ブログ
「殺劫(シャーチェ)チベットの文化大革命」「殺劫(シャーチェ)チベットの文化大革命」

■このブログでもときどき取りあげてきた、北京在住のチベット族女流作家、ツェリン・オーセルさんの初の邦訳本『殺劫』が集広舎から出版された。ツェリン・オーセルさんと同書がうまれた背景については、過去のエントリーも読み直してほしい。オーセルさんも、夫の王力雄さんも私の尊敬するノンフィクション作家であり、ノンフィクションとはかくあるべし、と私が思う作品を発表し続けている。翻訳は読売新聞編集委員の藤野彰氏と劉燕子さん。劉さんは私にオーセルさんを紹介してくれた友人で、関西の大学の講師をしながら、強い意志をもって日中の文学交流に尽くしてきた人でもある。

http://www.shukousha.com/item_192.html

■きょうは同書のレビューエントリー。この本はなんと4600円(税別)もするのだ。しかも分厚い。私は集広舎さんに献本していただいたが、この価格を支払うのには、よほどの高給取りか、書籍資料費で領収書がきれる研究者か、チベット大好き人間以外はかなり勇気がいるだろう。私が作者と縁もゆかりもない人間であったら、3回くらい本屋にかよって、本屋で半分くらい読んで、やっぱり資料性からいっても買わなきゃ、どうせこんなマニアックな本の重版はむりだろうから、今かわなきゃ、すぐ絶版になってあとで後悔すると、ぐるぐる悩んだすえ、レジにいく、そういう類の本だ。しかし大きい本屋にいかなきゃ、実物のチラ見すらできない。だから、そういう人に参考になるようなレビューにしよう。

■この本は、写真集であり、証言集であり、ノンフィクションである。チベットの文革状況の記録は、同書が台湾で最初に出版されるまでは、たった一枚の写真しかなく、空白状態だったという。そう言う意味で、第一級の文革研究資料でもある。写真はきっちり数えていないが250〜300枚収録され、写真解説しながら、チベットの文革がどのように始まり、チベット少年少女がどんな風に紅衛兵になり、どのように寺や仏像や教典が破壊され燃やされ、寺院の宝物が略奪され、貴族や僧侶、活仏が「牛鬼蛇神」としてつるし上げられていったかがまとめられている。そして文化大革命、チベット語訳で言うところの「リンネーサルジェ」が、奇しくも中国語「人類殺劫(レンレイシャーチエ)と非常に発音が似ているように、文革とは、まさに「殺劫」(殺人衝動、長時間におよぶ殺戮)のようなものであったと、私たちに思い至らせる構成になっている。

■写真を撮ったのは、ツェリン・ドルジェ。1966年当時、中国人民解放軍エリートであったオーセルさんのお父さんだ。国民党軍逃亡兵を父にもつ、漢族とチベット族のハーフであるが、漢語とチベット語を流暢に話すその才能がみこまれて解放軍で出世していた。その年、中国では文化大革命という名の激しい権力闘争がはじまり、それは全土に広まった。ちなみにオーセルさんはそんな文革スタートの年に生を受けている。

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「殺劫(シャーチェ)チベットの文化大革命」

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