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【ちゃいな.com】中国総局長・伊藤正 米のソフトパワーを警戒

2008.11.21 03:36
このニュースのトピックス金融危機

 「オバマ氏は一生、米大統領のイスにつくことはないと年初に予言した。若者は多くの虚偽を信じ、老人は多くの真実を疑るというが、私はまさに老いた…」

 中国の著名な改革派論客の呉稼祥氏は、バラク・オバマ氏の勝利を予測できなかった不明を、ブログでわびた。呉氏は趙紫陽元総書記のブレーン。天安門事件(1989年)後渡米したが、数年前、北京に戻り政府系機関に復職、評論活動を再開している。

 呉氏が間違えたのは、黒人、移民二代目、非プロテスタント、テロ組織との関係のうわさ、行政管理経験の欠如など、オバマ氏は米国の価値観では受容されない「黒五類」(地主などかつて中国で階級の敵とされた五種類の人)に等しいとみていたからだった。

 「私は米国の歴史慣性や現実の政治力を重視し、米国の革新能力や夢想力をみくびっていた。さらに米国のエリート層の知謀を高く評価し、平民の政治への参加と熱情を過小評価していた」

 そのうえで呉氏は、大統領選を「平民が貴族に、夢想が現実に、寛容が偏見に、青春が老年に、変革が常套(じょうとう)にそれぞれ勝利した」とし、「人類の歴史でこれほどぬくもりと想像力を人びとに与えたことはない」と絶賛、自らの米国に対する信念の不足を恥じる。

 金融危機が吹き荒れ、自動車「ビッグスリー」までが経営困難に陥る米国。左派系学者らは、米一極資本主義の破綻(はたん)と歓迎、対米依存から脱却せよと主張するが、知識人の多くは、大統領選で示された米国民主主義のダイナミズムに感動し、米国の光を見る。

 国営新華社発行の「国際先駆導報」(11月10日)で、シンガポール国立大学東亜研究所の鄭永年所長は、オバマ氏の当選は、米国のソフトパワー(軟実力)を世界に見せつけ、世界を魅了したと述べている。同氏の言うソフトパワーとは、候補者が予備選前から2年近くも政策や理念を戦わせ、選挙民の審判を仰ぐという徹底した民主主義にほかならない。

 中国は米政府の招きで大統領選の視察団を派遣した。それに加わった中国政法大学の叢日雲教授は、投票所などの大ざっぱな管理に驚く。不正投票をしようとすれば、簡単そうに見えた。同行した中国政府の役人たちは「中国の村民委員会(村議会)選挙の方がまし」と話したという。

 しかしそれは大勢に影響はない。肝心なのは、世界中に候補者の主張とそれに対する国民の反応が公開される選挙戦のプロセスだ。それによって候補者も鍛えられ、国民との距離を縮める。自ら選んだ大統領には国民も責任を負う合意ができるのだ。

 翻って中国はどうだろうか。国民が直接選挙する機会は、末端組織に限られる。国家主席や首相などは全国人民代表大会(全人代)で、地方政府の首長は地方の各級人代で選出するが、その人代代表を選ぶのは共産党である。しかも密室で。

 中国では行政に対する不満から騒乱事件が頻発しているが、叢教授は、米国では騒乱にならない一因に、直接民主主義制度の成熟を挙げる。自ら選んだ政府であり、悪ければ次の機会に選び直せばいい。鄭永年氏は、中国が米大統領選から教訓を得、政治の民主化と透明性を高めよと提言する。

 しかし共産党は独裁体制の維持に躍起で、最近また、言論統制を強化した。米国債の最大保有国になった中国が恐れているのは、米国のソフトパワーのようだ。(中国総局長)

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