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【古森義久の北京奥運考】中国の異質性 (1/2ページ)
ラリー・マルーニさんと北京のホテルで昼食をともにして、「ああ、オリンピックはこういう人たちに支えられているのだな」と実感した。彼はワシントンでの知人、米国政府関連機関と契約して働く40代半ばの米国人男性である。
五輪ファンという言葉は彼にとって軽すぎる。夏冬両方のすべての五輪に毎回必ず、どんな遠隔の地でも駆けつけ、開会から閉会まで多くの競技の観戦だけでなく、主催国の社会や市民や文化までをじっくりと観察するというからだ。
まったくの個人で動くその種の五輪観察の常連が米国はじめ欧州やオーストラリアに合計数百人もいて、開催地でいつも顔を合わせる。独身のマルーニさんは単独行だが、他にも一人旅が意外と多いのだという。
「常連は30歳代以上から70代まで文字どおり多様な男女です。アテネ五輪では70代半ばの米国人男性が現地で心臓の病気で急死して、仲間内では『ああいう死に方なら悪くない』と話題になりました」
マルーニさんは日ごろの余暇や趣味をすべて五輪観察に傾ける。出発は1988年のソウル五輪だったから夏の五輪だけでも北京は6回目となる。
「いつも五輪開催の14カ月ほど前から交通手段、宿泊、入場券などの手配を本格的に始めます。その準備段階から現地での競技観戦を含めて、今回の北京はやはり異質です」
マルーニさんは異質を指すのに「アノマリー」という英語を使った。
どの五輪でも近年は開会閉会の式から各種競技までのイベント入場券をインターネットで売り出すようになったが、今回に限ってグローバルな規模での詐欺サイトが誕生した。「beijingticketing.com」というサイトで各種チケットの販売が始まり、多くの人が購入したものの、すべて架空だと判明した。被害総額は5000万ドル以上で、米国などの司法当局が捜査を始めた。マルーニさんもあわや被害にあうところだった。

