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【産経抄】4月25日

2008.4.25 02:53
このニュースのトピックス邦楽

 演歌といえば、北国の酒場を舞台に、男と女の悲しい恋の情景が思い浮かぶ。もともと、壮士と呼ばれた若者たちが民権思想を広めるために、演説の代わりに街頭で歌ったのが始まりだ。

 ▼次第に政治的なメッセージが失われて、大衆演芸のひとつとなっていく。添田唖蝉坊(そえだ・あぜんぼう)は、明治から大正にかけて演歌の大スターとして、庶民の喜怒哀楽を織り込んだ流行歌の数々を世に送り出した。大正9年作の「新わからない節」もそのひとつ。

 ▼♪ああわからないわからない 今の世の中わからない 経済事情もわからない どいつもこいつもわからない こんな調子で、世の矛盾をあぶり出す。「新」がつくのは、明治40年にすでに「ああわからない」を作っているから。「新々わからない節」だってできそうだ。

 ▼中国での遺棄化学兵器処理事業をめぐる不正支出事件は、「わからない」ことだらけだ。問題の企業はこれまでも談合など不正の疑いがもたれ、何度も捜査対象になっている。それなのに処理事業について、国からの受注を独占してきた。

 ▼処理事業そのものがいかがわしい。終戦時、旧日本軍が化学兵器を中国側に引き渡したことを、はっきり示す文書も見つかっているにもかかわらず、向こうに言われるままに、数千億円もの税金をつぎ込もうとしている。政府は何かというと金がないと、社会保障費を削る言い訳ばかりしているというのに。

 ▼唖蝉坊の歌を受け継ぎ、テレビやCDで歌っている小沢昭一さんの一番のお気に入りは、「金金節(かねかねぶし)」だという。大正時代の風潮を、♪金だ金々 金々金だ 金だ金々 この世は金だ と笑い飛ばす。むしろ、平成の世相にこそあてはまる。唖蝉坊が再び脚光を浴びているのも、むべなるかな。

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