ニュース: 国際 RSS feed
中国のナショナリズム 岡崎久彦氏の見方
このニュースのトピックス:中国
ナショナリズムとはどの国にも存在し、政府が扇動すると必ず歯止めがきかなくなるという性質のものだ。外交はどこかで相手国と妥協しなければならないものなのに、国民は自分の国さえよければ満足だから、それを許さない。政府が国民をあおれば、外交上の妥協点が見いだせなくなってしまうのである。
現在の中国のナショナリズムの原点は、天安門事件にある。事件が起きた1989年までの10年間に、大学にいた学生らは民主主義の信奉者だった。中国政府は民主化運動をつぶし、江沢民・中国共産党総書記は愛国主義運動を政治の中心に据えたのである。
運動のピークは95年だ。日清戦争敗北100周年と抗日戦争勝利50周年を機に、台湾奪還を高らかにうたい出した。反日をテーマにした記念館が全国各地に広がり、展示が過激になったのもこのころである。
江氏のキャンペーンは完全に成功する。「台湾を回復して100年の屈辱を晴らす」と誰もが言い出し、釈放された民主活動家はもはや、愛国主義者に転向するか、米国など外国へ逃れるかしかなかった。
しかし、中国のナショナリズムには転機が訪れている。きっかけは、2005年の反日デモだ。中国政府は日本の国連安保理常任理事国入りに反対するため、官制デモを組織したが、次第に民衆までがデモに参加して活動が過激化した。デモが反政府運動につながる恐れが出てきたため、政府は怖くなり、反日デモを厳しく禁じるようになる。
社会に不満が充満している状態で、ナショナリズムを放置すると危険だ。北京五輪の聖火リレー妨害に反発する反仏デモも、中国政府は間もなく抑え込むだろう。それは中国が穏健になったわけではなく、デモが国内暴動に転化することを恐れているだけである。
(談)