ニュース: 国際 RSS feed
【主張】中国「愛国」デモ 五輪壊す過激な民族主義
北京五輪の聖火リレーをめぐって、国際社会に広がる中国批判に対し、強い反発を示す動きが中国内外で拡大している。五輪開催国で「愛国心」が盛り上がりをみせるのは当然だろうが、今回の動きは見過ごすわけにはいかない。
中国内で100以上の店舗を展開する仏大手スーパー「カルフール」の不買を呼びかける抗議行動が目立つ。携帯メールなどで「カルフールの大株主が(チベット仏教最高指導者の)ダライ・ラマ14世に資金援助している」との情報が流れたのが発端という。カルフール側が「北京五輪を支持している」と弁明してもおさまらない。標的の店舗を中国国旗が取り囲む異様な大規模デモは、仏大手自動車メーカーが進出した湖北省武漢など10都市以上に広がった。
「フランスは口を閉じろ」などと叫ぶ抗議の矛先はカルフールというより、人権重視の立場から中国政府のチベット弾圧に厳しい姿勢を示すフランスと欧米各国に向けられている。中国内の動きと連動するようにパリやロンドン、ベルリンなどでも中国人の若者らによるデモが繰り広げられた。
表現は自由だ。中国人による欧米批判も、五輪聖火リレーへの抗議と同様に非暴力である限り許されてよい。
だが、比較的客観的な報道ぶりで知られる中国中央テレビのキャスター、白岩松氏が「不買運動では問題は解決しない」と冷静な対応を呼びかけたところ、「民族の裏切り者」といった非難がネットなどに殺到した。
米ノースカロライナ州の大学でチベット支持の学生グループと中国政府支持の学生グループの仲裁にあたった中国女子留学生が、ネット上で「売国奴」とののしられ、中国の実家には汚物がまかれたというニューヨーク・タイムズ紙の報道もあった。いずれも極端な例ではあろうが、対立する意見を一切認めない脅迫的反応には一党独裁国家の影が感じられ、強い違和感をおぼえる。
日本に滞在する中国人留学生の組織が聖火リレーは「中華民族の団結力を示している」とし、26日の長野でのリレーを盛り上げるため動員計画を立てているという。節度ある行動を望みたい。
偏狭な愛国主義は排外主義に転化する。排外主義は北京五輪のスローガン「ひとつの世界、ひとつの夢」とは全く相いれない。