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【正論】日中国交正常化35年 慶応大学名誉教授・中村勝範

2007.10.10 03:42
このニュースのトピックス正論

 ■21世紀は「中国の世紀」か

 ■大気汚染など追及できない独裁体制

 ≪2010年代に日本抜く?≫

 中国の経済成長が好調であるということから「21世紀は中国の世紀」という声がある。

 昨年の中国の国内総生産(GDP)はアメリカ、日本についで世界第3位である。日中両国の経済成長率が現状のままつづけば、2010年代の中頃には中国のGDPは日本を抜くといわれている。

 中国経済の急成長は他面において自然破壊、環境汚染、格差の超拡大を伴い、その害は世界に及んでいる。

 わが国もまた高度成長期には「21世紀は日本の世紀」と得意であったが、環境破壊、公害患者を続出させた。

 幸いにして、わが国は民主主義国家であった。汚染水をたれ流す企業を追及する言論の自由があった。林立する煙突から吐き出すスス、微粒子を大きく写して知らせる報道の自由があった。公害病の根源に迫る大衆集会、抗議デモを展開できる行動の自由があった。他方、中央の議会壇上で為政者の監督責任を追及する野党があった。公害問題を採り上げれば票になることを知った与党は野党に負けじと公害の元凶である企業と企業に甘い自党為政者に噛(か)みついた。

 ひるがえって中国である。

 今年3月、温家宝首相は全国人民代表大会での政治活動報告において、貧しい者でも買える住宅を整備し、農民が汚染されていない水を飲めるようにし、農地収用で立ち退きなどによる民衆の権利侵害を禁じることを保証する、と「和諧社会」の構築を提唱した。

 言葉は明快であったが、なに一つ実現されなくとも中国には公約違反を追及するマスメディアがない。野党は存在しない。大衆抗議は官憲により蹴散らされる。すなわち共産党独裁国家である。

 ≪長年に及ぶ「価値観の真空」≫

 今年7月、経済協力開発機構(OECD)が中国の一部の都市における大気汚染は世界最悪である、と報告した。来年、オリンピックが開催される北京では選手が大気汚染でやられてしまうという危惧(きぐ)が世界のオリンピック関係者から漏れている。

 わが国でも1970年代の大気汚染は世界最悪であった。光化学スモッグの注意報は年間延べ300日を超えたが、排ガス規制により、延べ100日を下回るようになった。

 ところが、2000年以降、延べ100日を超え、200日を突破するようになった。今年は過去5年に比べ、10倍超のハイペースで注意報が頻発されている。中国の光化学オキシダントが西風に乗って飛来しているからだという(読売新聞6月25日)。

 中国で起きている大気汚染を含む環境、食品、医薬品の毒物禍、労働者の悲哀、汚職、収賄は共産党独裁の必然的産物である(本欄拙稿6月23日)。アメリカはプリンストン大学の中国問題研究の学者が学術会議で、中国の有害産品問題は中国共産党の長年にわたってもたらした「価値観の真空」から生じた結果だ、と発表した(産経新聞7月20日)。

 むろん、中国共産党の指導者たちも中国にはびこる諸悪とその根源には気づいている。諸悪を克服する道もわかっている。日本に学ぶことである。

 しかし、それはできない。メンツの問題ではない。原理として不可能である。日本の民主主義を受け入れたならば、独裁を本質とする共産党はたちまち霧消する。

 ≪複数政党制導入の声に鉄槌≫

 6月25日、胡錦濤総書記は党政治局常務委員、政治局員の全員、中央委員、同委員候補を集め、「党の思想路線の本質」と題する演説をした。いわく共産党の本質は独裁である、この基本路線への異論は許されない、としたうえで「全党員は党中央の周りに、より固く団結せよ」と厳命した。今年2月、中国人民大学の元副校長が複数政党制導入を促すに等しい論文を発表した。改革派からは一定の評価を得ていた。

 総書記の演説は「西側の三権分立や多党制を行わず」、欧米式の民主政治の導入を全面的に否定していたが、総書記の念頭には、人民大学元副校長の論文とそれに共鳴する支持者たちに鉄槌(てっつい)を加えようとする意図があった。

 複数政党制の否定は、人間は顔が違うごとく考え方も異なるとする人間性の本質を無視するものである。中国の勤労者は、共産党員、官僚、軍幹部、富裕者と利害関係を異にする。虐げられている民衆の味方である政党、団体、マスメディアを欠く中国の暗部は一層拡大する。

 かかる様相にもかかわらず「21世紀は中国の世紀」となるならば、世界は闇である。(なかむら かつのり)

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