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【外信コラム】マーライオンの目 ブータンは桃源郷にあらず
ヒマラヤ山脈の王国ブータンを昨年末、取材で初めて訪れた。「のどかな風景が広がり、昔の日本にタイムスリップしたみたい」と、日本人観光客に人気があると聞く。経済成長至上主義ではなく、国民総幸福量(GNH)に重点を置く国造りを評価する向きもある。しかし、現実のブータンは桃源郷ではなかった。
空港から首都まで山道が続くのだが、至る所で道路の拡幅工事が行われていた。今年予定される国王の即位式に間に合わせるのだという。でも、気温が冷え込む中で働いているのは隣国インドからの出稼ぎ労働者ばかりだった。ブータンの主要な外貨獲得産業である水力発電を購入しているのもインドだ。その額は国家収入の4割に達し、さらに4割を外国からの援助に頼っているという。外交政策でもインドの助言を仰いできた。この国の内情は極めて厳しい。
ブータンは従来の「鎖国」政策を改め、国民生活もまた激動の時代に入った。1999年に解禁されたのはインターネットだけではない。テレビ放送も、である。21世紀の直前までラジオだけの暮らしだったのだ。
歴史上初の情報化時代を迎えたブータンは同時に民主化政策も進めている。昨年末には初の国政選挙が行われた。それでも「王制のままでいい」と話す若者は多い。どう変わっていくのか、あるいは変わらないのか。幻想ではなく現実のブータンに注目していきたい。
(藤本欣也)
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