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【音楽の政治学】民主化の歌「真実の10カ条」 若者の心をつかむ (1/2ページ)
1992年5月18日、タイの首都、バンコクの王宮広場前に新政府に反発する約4万人の学生らが集結して軍と衝突、死者44人、負傷者400人に上る流血の事態となった。惨劇の引き金は、その年の3月に、陸軍系の正義団結党が第一党になり、事前には「いかなる政治的な地位にも就かない」と確約していたスチンダ陸軍司令官が新首相に選出されたことだった。学生らの抗議行動の広がりは、もはや止めようがなかった。
プミポン国王は20日深夜、スチンダ首相と、政治勢力を二分していたチャムロン元バンコク知事を謁見室に呼んで諭すように語り、“調停”した。国内の全テレビ局が特別番組として放映したこの場面は「5月の騒乱」決着の瞬間として、今も多くの人の記憶にとどめられている。
タイが民主化に動き出したその年の暮れ、ひとつのグループソングが若者の心をとらえる。民主主義を題材にした「真実の10カ条」。同国人気グループの「カラバーオ」が政治家へのメッセージを込め、カントリーソング風に歌いあげたものだ。
♪人は皆、民主主義を望んでいる。あなたを選んだ市民のため、1つは公約を忘れないで…1つは自らの利益を優先するようなことに目を向けないで…
グループのリーダー、カラバーオさんは、76年10月6日に学生と警官隊がぶつかった「血の水曜日事件」に参加、郊外の森で炊事班として活動した。彼個人の経験も手伝って、歌は自然と若者の心をつかんだようだ。
70年代から始まった学生らによる民主化闘争の歴史には、それまでにも数々の歌が刻まれてきた。民主化を歌った最初の楽団、「カラワン」は74年以降、全国を行脚して労働者や農民に解放闘争を訴え、マヒドン医科大学や教育大学の学生を中心に結成された楽団も現れた。カラバーオさんらの歌はその延長線上に新境地を切り開いていく。

