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【世界のかたち、日本のかたち】大阪大教授・坂元一哉

2009.1.6 03:15
このニュースのトピックスオバマ次期米大統領

 ■多極世界で「合衆国再生」

 新年1月20日の宣誓を経て、バラク・オバマ氏は米国第44代大統領に正式に就任する。世界は新大統領のもとで米国が見る夢に、あらためて注目するだろう。オバマ氏の著書の題名(邦題)を借りて言えば、「合衆国再生」という夢にである。

 米国が国内の諸問題を片付け、金融経済危機を克服し、テロとの戦いに勝利して、世界の信頼を回復する。オバマ氏はいまそうした「合衆国再生」に邁進(まいしん)しようとしている。伝えられるところでは、すでにアフガニスタンに米軍3万人を増派するとともに、最大8500億ドルの経済刺激策を実施することを決めているという。ブッシュ政権の国防長官ゲーツ氏を留任させ、就任式の牧師に保守派のウォーレン氏を選んだのも、夢の実現に欠かせない米国民の団結を意識してのことと思われる。

 言うまでもないことだが、「合衆国再生」の夢を実現するには米国民の団結と米国自身の努力が最も大切である。だが同時に、世界にその夢を受け入れてもらう努力も必要になるかもしれない。テロとの戦いにせよ、金融経済危機にせよ、世界各国の協力なしには、解決が難しいからである。

 この点で米国が注意すべきは、「合衆国再生」が米国の「一極支配」につながるとの誤解を生じさせないようにすることだろう。いまの世界は、米国の力なしに安定した秩序を維持できる状況にはない。金融経済危機が明らかにしたのは、米国が没落しても、EUやロシア、あるいは中国などには、米国に代わって世界を引っ張っていく力はないという事実である。だから世界の多くの国が、米国の「再生」自体はよいことだと考えるのではなかろうか。

 だが「再生」の夢の延長に、米国の意のままになる一極支配の世界をつくる夢がある、と受け取られたらどうだろうか。それでも喜んで「再生」に協力する国があるとはとても思えない。

 一極支配というのは、そもそもが無理な考え方である。実際には、そういうものがこれまで存在したかどうかも怪しい。たしかに冷戦後の米国の中には、一極支配の夢を描いた人がいた。だがその夢は実現しなかったし、今後も実現しないだろう。グローバリゼーションの進展で世界は小さくなったが、たとえ米国であっても、すべてを一国だけで決め得るような簡単な場所ではない。

 米国の指導者は、あらぬ誤解を避けるためにも、「合衆国再生」の夢を多極世界の未来像とともに語るべきである。世界をリードする能力と意志を持つさまざまな国や国家群が、互いに競いながらも協力して世界を動かすというような未来像をである。そこで米国は力に応じた役割を果たすが、ときには他国のリードにも従う。そういう未来像が示されれば、世界は安心して「合衆国再生」に協力できるだろう。

 オバマ氏は聡明(そうめい)で人の話をよく聞く、謙虚な人物と見受けられる。人によっては、そういう人柄に米国の敵がつけ込むのではないか、と心配するむきもある。だがその人柄が、米国の力の限界を知り、傲慢(ごうまん)を排して慎重に外交を進めていく資質を感じさせるのもたしかである。オバマ新大統領のもとで「合衆国再生」が実現することを期待したい。(さかもと かずや)

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