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米大統領選に寄せて 古森義久 「身すくむほど未知の人物」 (1/4ページ)
バラク・オバマ氏の大統領当選が決まった11月4日は間違いなく米国の歴史の大きな転換点となろう。米国民の多数派はこの日、かつてなく大胆で未知の変革への道を選んだ。近年の米国にとって、国の針路を左右する最大の事象が起きた歴史的な日は米中枢同時テロ(9・11)だといえるが、この11・4はまったく別な意味でさらに大きな歴史の重みを持つこととなろう。
オバマ氏は計2年近くの長く厳しい2つの選挙戦をみごとに勝ち抜いた。その過酷さから「ボクシングをしながらのマラソン」とも評される予備選では、同じ民主党の強敵ヒラリー・クリントン候補に挑戦し、当初の予測を覆して党指名の栄誉を勝ち取った。本番では戦争ヒーローの共和党ジョン・マケイン氏と対決し、9月半ばには支持率で差をつけられながらも逆転し、圧勝した。候補者も有権者も、あまりに長く険しい道程をこれでもか、これでもか、と闘い続ける自虐のようなプロセスも、当事者からすれば世界に誇るアメリカ民主主義の実践なのだろう。
オバマ氏の天賦の弁舌の才はヒラリー氏との争いでは、対決調の同氏の言動とコントラストを描く融和や癒しの語りかけで効果を発揮した。マケイン氏には、自他の立場の差異を鮮明にする鋭い語調で同氏の弱点の経済や金融の課題をぶつけ、相手のイメージをブッシュ政権と重複させた。
どんな非難や攻撃にも冷静さを失わず、明解な口調で応じるオバマ氏の挙措(きょそ)は、マケイン支持の政治評論家チャールズ・クラウトハマー氏に「すぐ背後で手投げ弾が爆発してもあわてない」と評させたほどだった。パフォーマンスという域を超え、カリスマと呼んでよい資質だろう。民主党傾斜の大手メディアの記者たちが「陶酔」と皮肉られるほどの強い支持をにじませるオバマ報道をした一因も、そのへんにあったといえる。

