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【グローバルインタビュー】米に「進歩派」の時代 新政治研究所所長、ピーター・レイデン氏
手あかの付いた「リベラル」ではなく、「プログレッシブズ(進歩派)」−。そう自称する新世代の民主党支持層は、今回の大統領選をどう左右するのか。サンフランシスコの新興シンクタンク「新政治研究所」のピーター・レイデン所長に聞いた。(聞き手 松尾理也)
−−あなたは自らを「進歩派」と呼ぶ新しい民主党支持者の1人とみなしている。「進歩派」は、現在の政治状況をどうとらえているのか
「レーガン政権以降の4半世紀、米国は保守の時代が続いた。そして今、それが崩壊しようとしている。では次に何が来るのか?われわれの考えでは、米国は今後数十年続く”進歩(プログレッシブ)の時代”を迎えるだろう」
「米国史上、進歩の時代は4回あった。最初は独立、建国の時代。次は南北戦争と奴隷制度の廃止。3度目は20世紀初頭、米国が農業国から工業国に変貌した時代。4度目は第2次大戦から60年代まで。いずれも、社会が大きく変化したにもかかわらず、旧来の政治が対応できなかったことがきっかけとなった」
「現代も同様に、急速な社会変化に政治がついて行っていない状況にある。中でも3つの大きな変化は(1)インターネットなどの新しいテクノロジーの登場(2)移民と、ベビー・ブーマーの子供の世代で人口集団として存在感の大きい”ミレニアル世代”という、2つの新しい集団、世代の登場(2)地球温暖化など従来の政治では対応できない新しい種類の問題の登場−だ」
「これはたとえば1930年代にフランクリン・ルーズベルトが登場し、進歩の時代を切り開いたときとよく似ている。新しいテクノロジーとして、ルーズベルトはラジオを活用した。さらに、保守政権が対応できなかった大恐慌をニューディール政策を掲げて解決した」
−−あなたは保守が崩壊したと主張するが、だとすると、その原因はなにか。ブッシュ政権に問題があるのか、それとも保守の理念そのものが時代遅れになってきているのか
「すっきりと答えるのは難しいが、少なくともいえるのは、保守の時代と進歩の時代が繰り返すのは健全ということだ。たとえば、1970年代に保守のタネがまかれたのは当然のことだった。当時は(リベラルな政治の下で)経済はうまくいかず、議会も機能停止に陥っていた。新しいイデオロギーとして保守が登場したのは悪いことではなかった」
「ところが、今、(共和党の大統領候補である)マケインが語っていることは、レーガンが昔語ったことと同じだ。小さな政府、ということだ。当時は、斬新なアイデアだった。しかし、たとえばハリケーン・カトリーナが浮き彫りにした連邦政府の機能不全ぶりを考えれば、大きな政府は必ずしも悪いばかりではないということが今や明らかになってきている」
−−進歩の時代を牽引するのはだれか
「進歩派の中核を占めるのは、インターネットに精通する一方、保守が進めてきた草の根(グラスルーツ)運動とよく似た反既成政治、反ワシントンの気風を持ついわゆる“ネットルーツ”たちだ。この集団は、2006年の中間選挙の勝利におおいに貢献した。しかし、民主党が議会で多数を占める今、ネットルーツと既成の民主党指導部との間の緊張はむしろ高まっている。たとえば、ロビイストは旧態依然とした政治の象徴だが、実は共和党も民主党も等しくロビイストに依存している。この点で、ネットルーツは共和党とはもちろん相いれないのだが、さらに既成の政治のプロである民主党指導部も気に入らない」
「もし(民主党の大統領候補となった)オバマが勝利すれば、より大きな、根本的な民主党政治の変化につながるだろう。オバマとクリントンの政策の差はさほどなく、なぜネットルーツたちがオバマに群がるか理解できないかもしれない。だがよく観察してみると、オバマは政治家というより社会運動家であることがわかる。自分を主張するのではなく、“あなた”という代名詞を多用する。選挙戦の運営をみても、決して上から、中央から押しつけようとはしない。そういったところが、非常にネットルーツの共感を呼ぶのだ」
「オバマは特異な政治家だ。2004年に出馬していれば泡沫候補として消え去っていただろうし、クリントンは圧勝していただろう。だが、今は2008年だ。この選挙は、古い政治と新しい政治とがせめぎ合う潮目の選挙となる。そして次回以降は、すべての候補がネットへの適応能力を要求されるだろう」
−−ネットルーツのお気に入りは、最初からオバマだったのか
「むしろ左派色が強く、もっとも改革派とみられていたエドワーズだった。エドワーズ撤退の後、ほとんどのネットルーツたちはクリントンに行かず、オバマに流れた。クリントンがいくらネットを利用しようと、ネットルーツたちは本能的に肌が合わないものを感じている。パロディーとして、クリントンを全体主義的な独裁者に描く動画がユーチューブなどに登場したことが、それを物語っている。われわれ進歩派にとっては、彼女は古い政治の象徴だ」
−−進歩派の台頭は自然発生的なものか、それともだれかが筋書きを書いているのか
「従来の政治が、大富豪や大企業に牛耳られていたことは確かだ。この流れを変えたのが、2004年大統領の予備選の時期に旋風を巻き起こしたハワード・ディーンであり、オバマはその流れを受け継いでいる。つまり、一般の人々から薄く、広く献金を集めるという手法だ。われわれはまだ変革期にいるが、大富豪や大企業の政治的影響力は減退しつつあると思う。だからこそ、今年の大統領選はおもしろい。なにしろ、根本的に新しい政治が生まれつつあるのだから」
■ピーター・レイデン氏 ニューズウィーク誌アジア特派員やワイアード・マガジンの編集者を経て、サンフランシスコに設立された新政治研究所の所長を務める。同研究所は2005年5月、シリコンバレーのベンチャー投資家の支援で民主党系政治の再構築を目指して創設され、インターネットなど新しい技術が政治に与える影響や、中南米系移民の増加に対応する政治戦略などを研究している。

