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【音楽の政治学】ロックの「ボス」と米大統領選
接戦が続く米大統領選は、有名人による支持合戦の様相も呈している。ここにきて“大物”の支持表明も飛び込んできた。米ロック界を代表するスターであり、畏敬を込めて「ボス」と呼ばれるブルース・スプリングスティーン氏が、民主党のオバマ候補支持を表明したのである。
ウェブサイトに公表された声明では、オバマ氏を「(ブッシュ政権による)8年間のひどい打撃」の後を託せる人物と称賛した。「ボス」は白人労働者層の心情の代弁者と見なされてもいるから、もともとこの層をがっちりとつかんでいたクリントン候補にとっては痛手だろう。
そのメッセージ性の強さから、スプリングスティーン氏は政治とも少なからぬかかわりをもってきた。ただし、彼のメッセージと米国の現実とは、いつもぴったりと重なり合ってきたわけではない。
「アメリカに生まれた…」と歌う「ボーン・イン・ザ・USA」が大ヒットしていた1984年。再選を目指すレーガン大統領(共和党)は「米国の未来は、この歌に宿る希望の中にある」と評した。スプリングスティーン氏の方は驚いて抗議した。この曲は本来、ベトナム帰還兵の絶望を歌ったものだった。
恥をかいた形のレーガン氏だったが、選挙では地滑り的勝利を収める。そして、今日まで続く「保守革命」の幕が上がったのだった。
2004年の大統領選直前。スプリングスティーン氏は他のリベラル系ミュージシャンとともに、オハイオ、アイオワ州など中西部の「スイング・ステート(どちらに転んでもおかしくない州)」の各地で、「変化に1票を」と題したコンサート・ツアーを敢行した。
だが、投票では、スプリングスティーン氏が描く物語そのものでもある米国の労働者たちは、労働者代表のはずだった民主党を「金持ち政党」と切り捨て、保守的な価値観を掲げる共和党へと走った。スイング・ステートは軒並み共和党の手に落ち、ブッシュ大統領が再選された。
現実はいつも、芸術家が紡ぎ出す作品よりも少しばかり散文的だ。4年前、「ボス」はそれをただ、ぼうぜんと見守るしかなかった。さて、民主党が好機到来と意気込む今回の大統領選は、どうなのだろう。 (ロサンゼルス 松尾理也)
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