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【早読み/先読み アメリカ新刊】マケインという男の全人像を描いた決定版 (1/3ページ)
−−戦場の怖さ、指揮官の責務を知り尽くした男−−
McCain: The Myth of A Maverick
「マケイン: 一匹狼の神話」
By Matt Welch
Palgrave Macmillan
■ベトナム終戦から33年、元捕虜から大統領候補への道
ブッシュ大統領の失政8年を受けて、今度こそホワイトハウスを奪還しようとする民主党だが、肝心の同党大統領候補指名は8月の党大会にまでもつれ込みそうな雲行きになっている。
結局のところオバマ、ヒラリーどちらが民主党候補になっても、11月の本選挙では、共和党のマケインの軍配が上がるのではないのか−。そんな予測が米政治専門家の間には広がっている。一方で、オバマ現象やヒラリー旋風を十分楽しんだ同盟国には、やはり重厚で経験豊かなマケイン大統領を待望する向きが広がってもいる。
ところがこのマケインなる71歳の政治家、メディアでは名が通っているものの、いったいどんな人物なのか、どのような政治哲学を持っているのか、意外に知られていない。
確かに経歴は耳にたこができるほど報じられている。ベトナム戦争にパイロットとして参戦し、撃ち落されて捕虜となり5年半にわたり、悪名高い捕虜収容所、別名「ハノイ・ヒルトン」で過ごした。捕虜生活では北ベトナム兵士によるひどい拷問を受け、自殺未遂まで起こしたことがある。パリ和平協定締結以後釈放され、帰還した。
が、アメリカが負けたベトナム戦争に対する米国民の視線は冷たかった。その後「愛国心」がことさら強調されたレーガン政権時下でのソ連邦崩壊に伴う冷戦終結を経て、アメリカ人のベトナムの記憶は風化し、帰還兵が白眼視された日々も過去のものとなった。
マケインが「英雄」視され出したのは、ここ10年である。上院議員となり、軍事委員会で正論を吐き、穏健派共和党の重鎮の座を占めた。
上院議員1年生時代から元捕虜ということでメディアはつねに注目してきたし、イラク戦争をめぐっては与党共和党議員でありながら、ブッシュに異議を申し立てたり、政治資金規正法案審議では、民主党議員と歩調を合わるなど、共和党保守派からは煙たがれる存在だった。その「一匹狼」的行動は逆にマスコミ受けしてきたといっていい。
怒りっぽい半面、親しみやすい人だそうで、オバマ、ヒラリー、マケインを取材したことのある米人記者の1人は、オバマ、ヒラリーがお高くとまっているのに対して、マケインは本当に気さくで愛想のいいおじいさんだったという。
その「人間・マケイン」を解剖したのが、リバタリアン(自由意思尊重主義者)の雑誌『リーズン・マガジン』の編集主幹で元『ロサンゼルス・タイムズ』論説副委員長のマット・ウェルチの手によるこの本だ。
ウェルチは、90年代にはUPI通信のスロバキア特派員、02年にはカナダ紙『ナショナル・ポスト』のコラムニストを経験するなど広い視野に立ったジャーナリストだ。その意味では、一見リベラル、芯(しん)に穏健保守といった二面性を持つマケインを分析するには適任者といえる。

