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【産経抄】2月28日
このニュースのトピックス:産経抄
ドボルザークが、1892年から3年間、ニューヨークに滞在していたとき、故郷のチェコにこんな手紙を送っている。「アメリカでは、普通の家の主人と高貴なお家の旦那様を呼び方では区別しません。これが、たいへん気に入りました。『親愛なる旦那様』といった敬称が必要ないのです」(『ドヴォルザーク』音楽之友社)。
▼93年にカーネギー・ホールで初演された「新世界より」は、ドボルザークの見たアメリカそのものといっていい。自由や民主主義といった、新しい価値観に対する驚きと敬意も含まれていたはずだ。
▼北朝鮮の招きで「ニューヨーク・フィルハーモニック」が、平壌で26日に行った演奏に、大きな拍手が起こったという。もっとも、ドボルザークのメッセージが伝わったとは思えない。なにせ、「親愛なる指導者」と崇(あが)められる金正日総書記のもと、自由と民主主義とは無縁のお国柄である。
▼史上初の米朝文化交流といっても、劇場にいたのは、党や政府の幹部ら特権階級の面々だ。普及率の低いテレビで生中継されたが、ラジオでは相変わらず米国非難の論評を伝えていた。
▼そもそも、今回の公演の前には、北朝鮮の非核化が順調に進んでいるはずだった。現実には6カ国協議は膠着(こうちゃく)したまま。ただ北朝鮮によって、国際社会に向けての「雪解け」ムードの演出と国内の体制固めに利用されただけではないか。
▼「新世界より」第2楽章の旋律を耳にすれば、日本人なら誰でも、「遠き山に日は落ちて…」で始まる「家路」の歌を思いだす。実は英語の元歌の歌詞のイメージはだいぶ違う。長い旅路の果てに、家に帰り着こうとする人の姿が浮かんでくる。拉致被害者のための歌といっていいはずなのに。