WIRED「天才が生まれる社会」をどう作るか+(2/2ページ)(2012.4.6 12:54

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「天才が生まれる社会」をどう作るか

2012.4.6 12:54 (2/2ページ)

 繁栄した文化はどれも、教育と学習の新しい形を切り開いていた。中世のフィレンツェでは、徒弟制度という教育システムが盛んだった。エリザベス女王時代のイギリスは、中流階級の男性の教育に力を注いだ。その恩恵を受けたのがウィリアム・シェイクスピアだ。自分の名前も書けない手袋商人の息子として生まれたシェイクスピアが、無料でラテン語の教育を受けることができたのだ。

 われわれも、このような創意工夫にあふれた時代に学んで、教育の分野における自由な実験を奨励する必要がある。『Khan Academy』のような無料のオンライン教育を利用するのもいいし、職業訓練の規模を拡大させるのもいいだろう。T・S・エリオットがかつて言ったように、「偉大な時代には、より多くの才能が存在したというわけではない。それらの時代は、浪費された才能がより少なかったのだ」

 最後のメタ・アイデアは、リスクを取ることを支援するような社会制度だ。シェイクスピアは、王室の支援に恵まれて風変わりな悲劇を書いた。ルネサンス期のフィレンツェでは、絵画の遠近法などの新しい芸術様式に対して、メディチ家が惜しみない支援を行った。こうした試みの多くは失敗に終わった。シェイクスピアはいくつか失敗作も残したが、そのような失敗が許容されたからこそ『ハムレット』が生まれたのだ。

 そうした社会制度を生み出すことは、野心的すぎてとても実現できないように思えるかもしれないが、そんなことはない。統計に基づく野球の分析方法で、[2003年にベストセラーになったノンフィクション書籍であり2011年に映画化もされた]『マネー・ボール』で有名になったセイバーメトリクスを提唱したビル・ジェイムズは、現代の米国はすでに、天才を生み出すことに非常に長けていると指摘している。問題は、われわれが生み出している天才が運動選手だということだ。

 ジェイムズ氏は、われわれは運動選手を特別扱いにしていると指摘する。スポーツは小さい子どものうちから奨励され、親は子どもの練習や試合の送り迎えをする。さらにスポーツには、リトルリーグからメジャーリーグまで、あらゆる過程において才能を育成するシステムが整っている。また、プロのチームはリスクをとることを恐れず、芽が出ずに終わることもある選手たちを、巨額を投じてドラフトで獲得する。これらの成果を挙げているメタ・アイデアのおかげで、カンザス州トピカのような小さな都市(エリザベス女王時代のロンドンとほぼ同規模)でも、天才的なスポーツ選手を数年ごとに輩出できているのだと、ジェイムズ氏は指摘している。

 今ほど天才が必要とされている時代はない。われわれは歴史に学ぶことができる。天才の集中は偶然ではないのだ。

TEXT BY JONAH LEHRER
TRANSLATION BY ガリレオ -高橋朋子/合原弘子

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