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日本で育った才能開花 男子マラソン「金」のワンジル
歓喜のフィニッシュを決めると、ワンジルはトラックに正座するようにして十字を切った。昨年末のマラソンデビューから1年にも満たない21歳は「とても気持ちいい。3度目のマラソンで金メダルとはすごいね」。五輪王者としての第一声は、流暢(りゅうちょう)な日本語だった。
ケニア・ニャフルル市出身。宮城・仙台育英高に留学して全国高校駅伝の連覇に貢献した。卒業後は福岡に拠点を置く実業団のトヨタ自動車九州へ。ここで、バルセロナ五輪銀メダリストの森下広一監督からマラソンのイロハを教わった。
「マラソンの始まりは35キロから」。恩師に口酸っぱく言われた言葉だ。その35キロで給水に失敗する痛恨のミス。だが、昨年の福岡国際で一緒に走ったメルガ(エチオピア)がボトルを差し出してくれた。「あそこで水を飲んでなければきつかった」。森下監督の教えを改めてかみ締め、直後にスパート。元世界選手権覇者のガリブ(モロッコ)とメルガを引き離した。
大会前、重大な決断をした。日本でプロランナーとして生きる、と。それは森下監督との決別を意味したが、駅伝偏重の実業団では限界があると感じ、弁護士を通じて退社届を内容証明郵便で送った。監督は「おれは銀だった。サム(ワンジル)には金メダルを取ってもらいたい」と言って送り出してくれた。「森下さんにメダルを見せたい」。心通う師に恩返しをした。
書をたしなみ、納豆を愛する1児の父。次なる目標は、世界記録(2時間4分26秒)の更新だ。「来年のベルリンで2時間3分台を出したいね」。ケニアで生まれ、日本ではぐくまれた才能が、目を輝かせた。(細井伸彦)
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