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【114の金物語(53)】1972年 ミュンヘン大会 水泳・男子100平 田口信教
このニュースのトピックス:水泳
“伏線”は4年前。田口信教はメキシコシティー大会で準決勝で失格した。ドルフィンキックとみなされた泳法違反。このときの1分7秒1は、金メダルタイムの1分7秒7を上回っていた。
ミュンヘン大会までの4年間で、キックは足首を水面ぎりぎりまで沈めて音が出ないように改良、外国の関係者に写真を送ってアピールした。試合では意識的なフライングでライバルを心理的に揺さぶり、スターターの呼吸でタイミングを読むスタートで先行、逃げ切る作戦を打ち出した。
8月30日、決勝。誰よりも早く飛び込んだが、ライバルが先行した。50メートルを7位でターンした後、先行型の田口を意識して飛ばしたライバルがペースダウン。体力を温存した田口が60メートル過ぎから出る。ラスト15メートル、前に誰もいなくなった。1分4秒9。史上初めて1分5秒の壁を破った。
4年かけて定着させた先行逃げ切りという勝ち方すら、五輪本番でライバルを撹乱(かくらん)するためのトリックだった。頭脳と創意工夫、新技術開発。日本人ならではの金メダルである。