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【産経抄】4月30日
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組み伏せられた井上康生は、大観衆の悲鳴のような喚声に包まれた武道館の天井に何を見たのだろう。きのうの柔道全日本選手権で、井上選手は準々決勝でよもやの敗北を喫し、五輪3回連続出場の夢はついえた。勝負の世界はいつも厳しい。
▼試合後、彼は目頭を熱くしながら「夢を追い続けたのが自分にとって良かった」と自らに言い聞かせるように語った。進退をかけた最後の大舞台で攻めの柔道に徹し、全力を出し切った姿は、後進の良き手本となろう。改めて拍手を送りたい。
▼その井上選手が夢にまで見た北京五輪は開幕まであと100日に迫った。だが、4年に1度の待ち遠しくワクワクした気分にどうしてもなれない。ホスト国の中国が熱くなればなるほど、ひんやりした風を感じてしまう。やはり長野のあの光景を見てしまったからだろうか。
▼小欄は長野駅前で聖火リレーを見守った。15分前に現場に着いたのだが、ごく近くでみることができた。大きな五星紅旗を林立させていた中国人留学生グループと小さなチベット旗をもった一団とが、警察が設けた柵をはさんで罵(ののし)りあい、一般の長野市民はほとんど寄りつかなかったからだ。
▼威勢のいい中国語のかけ声が飛び交う中、萩本欽一さんが走ってきたが、みるみる笑顔が消えていった。「欽ちゃん〜」という声援と「恥を知れ」という罵声(ばせい)が入り交じり、ビラやゴミが投げ入れられたのはご存じの通り。
▼聖火は、まもなく世界最高峰のエベレストをめざすが、中国はチベット側で聖火隊以外の登山隊を閉め出した。ネパールの規制も厳しく、武装兵士まで動員しているという。そこまでするなら、今年の開会式は五輪旗掲揚をやめ、中国国旗だけ掲げた方がすっきりする。