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【産経抄】4月20日
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司馬遼太郎氏の『空海の風景』に、空海が留学した長安(現西安)の街を柳絮(りゆうじよ)が飛んでいるさまが描かれている。柳絮とは柳の綿毛のことで初夏の中国大陸に舞う。司馬氏は川の流れや高原を背景に「夢のような景色をかもし出す」と書いている。
▼北京の街にもその柳絮が飛んでいるという。しかし、こちらはそんなのどかな風景ではない。北京五輪のメーン会場のこけら落としとなった競歩大会で視界を悪くし、選手や観客を悩ませた。チベット問題で「視界不良」に陥っている五輪を象徴しているようだった。
▼その北京五輪の聖火リレーが行われる長野ではもうハナミズキやリンゴが花をつけているころだろうか。だがこちらの関係者も今、それどころではなさそうだ。善光寺が出発地となることを辞退するなどで、リレーのコースや警備計画の練り直しを迫られているのだ。
▼善光寺は辞退の理由として「文化財や信者の安全」とともに「チベット問題への憂慮」をあげていた。内部でかなり議論もしたらしい。とすれば決して「ことなかれ主義」ではない。「宗教者の良心による苦悩の決断」と、理解しなければならないだろう。
▼苦悩といえば、警備当局の悩みも大きい。チベット問題で世界中からの抗議の「的」となっている聖火を、総力で守らねばならないからだ。抗議行動はさらに盛り上がりそうで、警察官ら4000人が動員され県警本部長が陣頭指揮をとるという。何ともご苦労さまである。
▼だが、これほど各国に迷惑をかけていながら当の中国は「悪いのはダライ一派だ」と傲然(ごうぜん)とした態度のままだ。何はともあれ「ご苦労をかけます」と頭を下げるのが筋というものだろう。五輪を開くほどの国に求められる礼節だ。