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「トラックの女王」が初めて知った厳しさ 福士加代子

2008.1.27 22:37
このニュースのトピックス陸上

 ボロボロになった娘の姿を、スタンドの母は涙で見ることができなった。27日の大阪国際女子マラソンで、19位でゴールした福士加代子(25)=ワコール。レース序盤は独走したが中盤以降、失速し、無念の結果に終わった。国内では無敵を誇る「トラックの女王」が初めて知った「42・195キロ」を走り抜く厳しさと残酷さ。ほろ苦いマラソンデビューとなったが、下唇をかみしめながら完走した姿は、ナニワの街に強烈な存在感と感動を残した。

 「加代子頑張れ」。よろめきながら走る福士が長居陸上競技場に入った瞬間、スタンドから割れんばかりの歓声と拍手が起こった。ゴールまであと400メートル。福士は大観衆の目の前で何度も転倒した。

 「あともう少し。立て立て」。伴走した永山忠幸監督(48)は懸命に声援を送った。「頑張れ」コールに包まれた競技場もいつしか一つになり、声援に後押しされながら最後まで走り続けた。

 「もう止めて」。スタンドの母、ちぎ子さん(57)はゴールの瞬間をあふれる涙で見ることができなかなった。途中からペースダウンした娘の姿をスクリーンで目の当たりにし、何度も途中棄権を訴えた。

 関係者によると、両親はレース後、医務室で対面。福士は30キロを過ぎてから記憶がなくなり、残り2キロの地点で「もう止めてもいいよ」と永山監督から声をかけられても気付かなかったという。

 レース序盤は圧倒的に福士のペースだった。ハーフマラソン、5000メートルなどの日本記録を保持する福士にとって、今回のレースがフルマラソン初挑戦の舞台だった。

 「あんなにバネ使ってちゃ無理だよ、絶対に持たない。30キロ過ぎたらペースダウンするよ」。シドニー五輪金メダルの高橋尚子を育てた小出義雄氏は、スタート直後の福士の走りをこう分析した。そして予感は的中した。

 中学時代はソフトボール部の捕手だった。進学した高校にソフトボール部がなく、バイトでも始めようかと考えた矢先、同級生から勧められ、軽い気持ちで始めた陸上。ワコールに入社後、高校とはまったく異なる本格的な練習に苦しんだこともあったが、才能はすぐに開花した。

 「1万メートルでもいっぱいいっぱいなのに、2時間も走りっぱなしなんて無理。映画1本見られる時間ですよ」。トラックの女王と呼ばれるようになってからもマラソン挑戦をかたくなに拒み続けたが、一念発起したのは「気が向いたから」。

 レース後、競技場を後にする際、マラソンの感想を聞かれ、「おもしろかったかな」と笑った。

 夢や目標については多くを語らない。負けん気の強さと思慮深さを併せ持つのが福士の魅力。競技場を去った後に出されたコメントにはこう書かれてあった。「また次の目標に向かって頑張りたいと思います」

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