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石井慧、執念で初切符 全日本柔道
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“負けない”策士
したたかな策士である。石井慧は決勝でしか当たらない鈴木桂のために、秘策を温めていた。大外刈りのモーションから大内刈りをねじ込む目くらまし。「一発掛けようと狙っていた」。開始38秒、左足を振ると好感触が…。
実は、よく出げいこに行く明大で、選手仲間から「桂治先輩に効く」と授かった技。これで「有効」を奪った。続く寝技は一本勝ち目前の28秒で取り逃がした。生き返った鈴木の猛追にあわてたが、逃げに徹してリードを守り切った。
3月下旬に左でん部を負傷し、6日の選抜体重別を欠場。優勝以外では門前払いとなる窮地で、必要な答えを何とか出した。「示しのつかない柔道。でも、ああいう柔道しかできない」。代表選出に後ろめたさは残るが、恥じる必要はない。
昨秋の100キロ超級転向から全勝。というより負けない策を巡らせている。ライバル棟田と競った準決勝が好例。リードを奪うと、がっぷり組み合う形に誘い、攻めも攻めさせもしない。「勝つために何をしたらいいのか知っている」と全日本男子の斉藤仁監督。
「一本」を美とする柔道通は嘆いても、石井の態度に濁りはない。「自分の柔道を見せても見せなくても、優勝すればいい」。言葉に多少の毒はあれ、外国勢の荒波にもまれ、航路を見失っていた日本柔道を導くコンパスにはなる。
肝の太さも魅力的。「北京まで一回りも二回りも強くなれる」。“船頭”としては、これくらいの自負があっていい。(森田景史)