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【いざ北京】柔道男子・野村忠宏 V4へ限界超える挑戦
100年を超える近代五輪の歴史のなかで、五輪4連覇を記録したのは陸上・走り幅跳びのカール・ルイス(米国)らわずか3人。そこに列しようとする柔道男子60キロ級、野村忠宏(ミキハウス)の試みは“限界を超えるための挑戦”と置き換えてもいい。
その野村が苦悩している。「怖くなるときがある。瞬間的に体勢や運が悪ければ、どうなるか…」
視線が落ちる。縦横に手厚いテーピングを施す右ひざ。昨年5月に靱帯(じんたい)を断裂、リハビリで上積みした筋肉が、ひざ下をつなぐ。「30年やってきて新規のけが」。からりと笑ってみせるが、不測の角度でたわむと背筋が凍る。
ひざの伸縮一つで大小自在に弧を描いた背負い投げ。体の一部というべき至芸も今は自らに刃を向ける。「それ以外の攻めは8、9割方戻ったかな。背負いじゃなくても技はある」。捨てるのも勇気と、体の声を受け入れた。33歳。もう若くはない。
だが、野村には強運が残る。一昨年のアジア大会を制した江種辰明(警視庁)が五輪選考から漏れ、残るは経験の乏しい若手。「その時々で勢いのある若手は出てきたが、全部受け止めてきた自信がある」。思えばシドニー、アテネで重ねた「金」は、青い芽を摘む作業の先にあった。「最高の自分を作れば、誰が来てもいい」。野村の手に掛かれば、歴史は繰り返す…か。
昨年9月の世界選手権を辞退。代表選考レースとなった講道館杯、嘉納杯も欠場した。全日本柔道連盟の強化委員会で「選ぶ理由がない」との批判が飛び交う中、2月のドイツ国際の派遣メンバーに。各国の主戦級が群れる戦場に、助走なしで飛び込む。
復帰戦という逃げ口上は利かない。「『オレじゃないと勝たれへんぞ』と、コーチにもライバルにも見せつけたい」。世界と渡り合う中で右ひざは…。前門の虎、後門の狼。ならば前に進むのが野村の流儀か。「今苦しむのは、8月に北京で笑うため」。目には4つ目の重き扉がくっきりと映る。
(森田景史)
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8月8日開幕の北京五輪まで7カ月。日本のエースたちは何を思い、どう戦うのか−。
