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【産経抄】12月16日

2007.12.16 02:32
このニュースのトピックス大リーグ

 ベーブ・ルースが現代によみがえったら、再び本塁打王になれるだろうか。当時はなかった移動の過酷さ、中南米出身の優秀な投手との対決があるから難しい。いや、昔より小さくなった球場では、714本どころか、1000本は打てる。

 ▼たわいのないベースボール談議に、結論が出るはずもないが、少なくとも当時、筋肉増強剤は存在しなかった。大リーグの薬物疑惑を調査した報告書に並ぶスター選手の名前を見て、ため息が出る。ルースとハンク・アーロンの通算本塁打記録を塗り替えたバリー・ボンズ外野手のほか、ロジャー・クレメンス投手、ミゲル・テハダ内野手…。

 ▼日本野球のお手本のはずだった大リーグに何が起こっているのか。ノンフィクション作家の佐山和夫さんによると、ベースボールが、健康でフェアなスポーツという思いこみ自体が、誤解だという(『大リーグが危ない』新潮社)。

 ▼八百長や賭博から、ビーンボールまで、多くの恥辱の事実がある。薬物の弊害は、選手の体をむしばむことにとどまらない。ステロイドで見違えるような体になった選手が本塁打を量産することで、ルースや過去の名選手と比較する楽しみが失われた。

 ▼つまり、ベースボールの歴史を台無しにした、と佐山さんはいう。事態の深刻さは、1919年のワールドシリーズで持ち上がった、ブラックソックス・スキャンダルと呼ばれる八百長疑惑に匹敵するといわれる。

 ▼事件に嫌気がさしたファンの心をつなぎとめたのが、その翌年にレッドソックスからヤンキースに移ったルースだった。人なつっこい笑顔と豪快な本塁打に人々は熱狂した。今回の危機を救うのは、ひょっとして日本選手かもしれない。一足早い初夢である。

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