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【生きもの異変 温暖化の足音】(39)ナキウサギの「悲鳴」 (1/3ページ)
キチッ、キチッ。まだ薄暗い午前6時過ぎ、かなたの黒い岩陰からエゾナキウサギの鳴き声がした。北海道大雪山系の十勝岳登山道で、甲高い声が近づいたなと思ったら、次の瞬間、3メートルほど先の岩の上にちょこんと座っていた。頭を上げて空高く見上げ、瞑想(めいそう)しているかのようなポーズ。
登山道脇の岩のすき間にはエゾイソツツジの葉や茎が押し込まれていた。「ナキウサギの貯食です」。富良野山岳会の桜田康之さんが説明してくれた。冬眠しないナキウサギはこの季節、せっせと食べ物を貯蔵するのだ。
1999(平成11)年からナキウサギの調査に取り組む川口短大講師の小島望さんによると、ナキウサギについては解明されていない部分が多いという。
「氷河期の生き残り」のナキウサギは寒冷な環境に適応した動物なので、温暖化は脅威になる。
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日本での生息地は北海道中央山岳部に限られ、標高1500〜1900メートルの高山が中心だ。岩塊地と寒冷な気候が絶対条件。50メートルほどの低地にもいるが、風穴などで低温が保たれた場所に限られている。
小島さんの調査によると、岩塊地を備えた実際の生息面積は、北海道全域でも1000平方キロに達しないという。
また、標高が100メートル上がるごとに気温は約0・5度下がる。温暖化で気温が2度上がるとしたら、ナキウサギは400メートル上方に移らなければならず、生息面積の約20%を失う。小島さんは「標高1000メートルに達しない生息地は将来、その多くが消失するでしょう」と憂慮する。
彼らは絶滅しやすい素因を抱えている。岩場のある寒冷地という特殊な生息条件に加え、一度に生まれる子供の数は少なく、生存率も低いのだ。また、定住性が強いので、環境が悪化しても200〜300メートルの移動さえ難しい。
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