ニュース:地方 RSS feed
【特報 追う】振り込め詐欺撲滅 首都圏と連携
振り込め詐欺の被害が沈静化する気配を見せない。9月末までの振り込め詐欺の全国被害は、認知件数が約1万7000件で被害金額は約 236億円。1日あたり約9000万円が犯行グループに流れている計算だ。そして「純朴ゆえに、だまされやすい土地柄」(捜査関係者)として知られ、振り込め詐欺グループの一大標的になっている東北6県の各県警もまた、その被害に頭を抱えている。各県警は被害防止と犯人検挙に向け躍起だが−。(豊吉広英、松本健吾)
「いわば、インフルエンザウイルスとワクチンのような関係」。ある県警の捜査員は、こんな表現で振り込め詐欺とその対策を表現してみせた。次々と変異していく手口。それに対し後追いしかできない警察側。さらに犯行グループは、経験を積むことで捜査に対して“耐性”を強めている。
捜査機関も手をこまねいているわけではない。警察庁は、被害発生の半減を目標に、10月を振り込め詐欺の撲滅月間に指定。現金自動預払機(ATM)での集中警戒などをしてきた。
その結果、東北6県の10月の被害は81件5592万2462円。昨年同月比で件数こそ17件増だったものの、被害額は1722万9212円減となった。特に、被害金をATMで払い込む手口が中心の還付金詐欺については、宮城、秋田、山形、岩手で0件に抑えられるなど、一定の抑止効果もみられた。
ただ、この効果は1カ月間に渡って大量の警察官を動員し、ATMなどを警戒してきたがゆえの結果。11月以降、同じような態勢を取ることは現実的に難しく、被害が増加に転じる可能性は高い。
一方、犯罪撲滅のために欠かせないのは犯人検挙だが、こちらは抑止以上にうまくいかない現状がある。今年1〜9月までの東北6件の被害認知が計 846件、被害総額は約9億8300万円にのぼるのに対し、検挙数は、わずか計78件30人。なぜ検挙につながらないのか。
多くの県警が障害として挙げるのは「足場の悪さ」。「東北で被害があっても、実際に犯行グループが電話したりATMから現金を引き出す現場はほとんどが首都圏。われわれが単独捜査するには多くの困難がある」と、ある捜査関係者は嘆く。
現在、首都圏では犯行グループ検挙に向け、大規模な捜査活動が行われている。警視庁では、都内で振り込め詐欺被害が確認されると、対策本部が金融機関と連携して被害金が引き出されたATMを特定。すぐ捜査員を出動させて周辺の防犯カメラの画像を集め、現金を引き出す役目の「出し子」の行動を確認・追跡している。「ATM利用の振り込め詐欺で犯人と接触できる可能性があるのは口座から被害金を引き出すタイミング。そこの素早い捜査こそが検挙の近道だ」と警視庁の捜査員は力説する。
しかし、犯罪現場を持たない東北の各県警は、現場到着までの時間的ロスや、その後の継続捜査での負担も大きく、足かせは格段に多い。捜査の中心となる捜査2課は衆院選の選挙違反警戒なども控えている。捜査関係者は「警視庁や首都圏の県警、そして被害者を抱える県警との連携をどれだけ緊密に行えるかが捜査の鍵」と分析する。
そうしたなか、検挙実績を挙げている県警もある。今年1〜9月で46件14人を立件した山形県警だ。10日にも神奈川、岐阜、和歌山の各県警と合同で、補填(ほてん)金名目の振り込め詐欺グループの実行犯ら4人を詐欺容疑で逮捕。県警は「この4人が指導役を務めており、詐欺グループの“本丸”だ」と胸を張る。
県警では、今年1〜4月に発生した5件(被害金額計約 500万円)の還付金詐欺事件が首都圏に活動拠点を持つ同一グループの犯行と分析。5月1日から捜査員計6人を派遣していたという。捜査2課の捜査員のほか、所轄の捜査員、さらには殺人など凶悪事件を扱う捜査1課の捜査員までも動員した。「総勢2000人規模の山形県警では、6人の派遣でも厳しいものがあった。それでも犯人は全国を対象にしているんだから、山形県警も日本国警察として臨むべきと考えている」と県警幹部。県警は、ほかに5人の捜査員を首都圏に送り込んでおり、さらなる検挙を目指している。
◇
■4種類の振り込め詐欺 警察庁で現在分類している振り込め詐欺の手口は4種類。子供や親類を装って示談金などを名目に現金をだまし取る「オレオレ詐欺」。インターネット有料サイトの接続料金や消費者金融への借金返済など架空の名目で現金を請求する「架空請求詐欺」。融資の保証金名目で多重債務者らから金を巻き上げる「融資保証金詐欺」。そして、年金や医療費などの返還を装って金を振り込ませる「還付金詐欺」だ。最近は、現金を郵送させたり、自宅を訪問したりするなど、ATMを使わない「非ATM型」の振り込め詐欺も増えている。