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【水めぐり 山形・東根】(中)地下水がはぐくむワサビ 究極のクリーン農法
山形県東根市の大富(おおとみ)地区を流れる清流、荷口(にくち)川は、集落を西に抜けると川幅を広げ、東北中央自動車道の手前で北に流れを変える。大富養鱒漁協の事務所兼加工場を過ぎたところだ。そこから川に沿ってしばらく行くと、ビニールハウスが見えてくる。
中に入れてもらうと、一面に青々とした葉っぱが広がる。ここ大富農産では豊富な地下水を使って、ワサビを栽培している。ハウスは12棟、計60アール。ワサビは8万6000株に上る。さすがに壮観だ。
地下水は2カ所でくみ上げ、配管でワサビの根の部分に供給されるが、天井部分にも配管がある。ここから地下水を噴霧して、ハウス内の温度を調節するのだという。
「冬は温かい地下水のエネルギーで保温し、夏は気化熱で温度を下げる。そうしてワサビが生育する5度から20度に保つことによって一年中、成長させ、路地では2年かかるところを1年で出荷しようというもくろみです」。社長の佐藤佳夫さん(60)が説明してくれた。路地のワサビは適温である春や秋しか成長しないのだそうだ。
ここでは地下水以外、燃料などは使っていない。だから石油高の影響もない。驚くべきことには、施肥も全くしていないという。県内産の軽石を敷いた培地に、ワサビの根が湿る程度に地下水が流れているだけ。くみ上げる地下水量もわずかなものだ。
「実験で肥料をやっても効果がなかった。根にはむしろ、酸素が必要なようです」と佐藤さん。農薬もなし。
地下水だからこそ可能な、究極のクリーン農法といえるだろうか。
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ハウス内を循環した地下水はハウスとハウスの間の水路にためられ、最後に荷口川に注ぐ。水路は冬季、消雪の役目も果たす。今はステーキなどに添えられるクレソンを、試験的に栽培している。排水口には木炭が重ねられている。「水が汚れているわけではないが、川にはイバラトミヨもいるので念には念を入れて」と佐藤さん。
荷口川の対岸は、モモとサクランボの花が満開。ハウスの北側は田んぼが広がり、その先に高速道路のインターチェンジが見える。水の音に紛れて、ヒバリのさえずりが、高くなり低くなりして聞こえている。汗ばむほどだ。
別のハウスでは、女性2人が、出荷する葉ワサビを切りそろえていた。近くの農家の人だという。笑顔で「年を取っても働けるから、助かります」。
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そもそもワサビ栽培は、佐藤さんが前に勤めていた日本地下水開発(山形市)が、農業用の井戸の活用法として取り組んだもの。かつて稲作のために各地で掘られた井戸が、政府の減反政策とともに使われなくなっていたという。
10年ほど前から試行錯誤を繰り返し、最初は多くの水を使うプール方式で試みたが成功せず、唯一、水漏れした鉢のワサビが大きくなったことがヒントになって、この方法に行き着いたのだそうだ。
農地法などの関係で株式会社ではできないため、長年かかわった佐藤さんが代表になって大富農産を立ち上げた。12棟を棟ごとに栽培時期をずらし、1年を通して出荷することを目指している。
佐藤さんは「設備費はかさんでも、経営的には成立すると思う。ワサビは薬効なども指摘されており、可能性が大きい。ワサビだけでなく、ほかの作物にも応用できるかもしれない」と期待を込める。また「チューブ入りでなく、本物のワサビを食べてもらいたい」とも。花や葉も食べることができ、ワサビは捨てるところがないそうだ。
で、のどかな大富農産には、農家や業者の人たちがひっきりなしに見学に訪れている。(本間篤)
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【用語解説】日本地下水開発
井戸掘削技術を活用し、無散水消雪システムや温泉源開発、土壌・地下水の浄化などを行っている。無散水消雪システムは、道路などに埋設した放熱管に、ポンプでくみ上げた地下水を送り込み、その熱で雪を溶かす仕組み。地下水は地中に戻すため、地盤沈下などは発生しない。大富農産は(電)0237・47・1003。