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【水めぐり 山形・東根】(上)緑と清流に宿る天然記念物
■守る会「第2のトキにはしない」
山形空港に近い山形県東根市の大富(おおとみ)地区には、2つの清流が流れている。小見(おみ)川と荷口(にくち)川。ともに地区内の湧水を水源とし、数キロで最上川に注ぐ。1地区で完結している珍しい清流だ。小見川は環境省の名水百選にも選ばれている。
大富小学校の校庭わきを流れる小見川は、約 400メートルにわたり、巣を作る魚として知られる山形県の天然記念物、イバラトミヨの保護区域に指定されている。
川幅2、3メートルの透き通った流れの中で、長く平べったい水草が揺れ、川下にはカモが2羽、浮かんでいる。近づくと、けたたましい羽音をたてて飛び立つ。さらに下流からは、白い大きな鳥、アオサギだ。
大富イバラトミヨを守る会会長の植松与悦さん(77)によると、昨年調査したイバラトミヨの推定個体数は 100匹ほどで、一昨年の1200匹から激減していた。原因は不明だが、地元で行っている水草刈りが影響している可能性もあるという。
この辺りは水がわき出るだけあって地下水位が高く、川の流れが滞ると水位が上がり、周辺の田や畑の土が湿って農作業に支障をきたす。このため土地改良区が年3回、川の水草を刈っているのだ。しかし、根こそぎ刈ってイバラトミヨの隠れ場所もなくなってしまうことから、今年は「守る会」が、両岸に近い水草を残して刈ったのだという。
「今年は増えると期待しているんです。決してか弱い魚ではないが、絶滅させるわけにはいきませんから」と植松さん。「守る会」の合言葉は「イバラトミヨを第2のトキにしない」だ。巣作りはすでに始まっている。
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川の水を引いたいけすが、流れの脇に点々と並んでいる。腰まで水につかって、男性が魚をえり分けている。きれいな水を利用して、マスの養殖が行われているのだ。さきほどのカモは水草を食べに来たのだろうが、アオサギの目当てはこのマスに違いない。
田んぼに近い小見川から離れて、荷口川の水源に向かう。こちらは集落の反対側の、果樹地帯だ。狭い流れをそのままいけすにして、網がかけてある。のぞいてみると、おびただしい数の稚魚がせわしなく動き回っている。そのすぐ上流に木とやぶに囲まれた一角があり、水がわいている。これが水源とされているのだが、さらにその先のサクランボ畑の小穴まで、小さな流れはつながっていた。
サクランボの枝には、ポップコーンのような白い花がごっそりついている。東根市は果樹王国・山形県の中でも、サクランボ生産量が日本一。ひと月もすれば、たわわに実をつけるはずだ。
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川はすぐに民家の密集地に入り、曲がりくねりながら家々の間を流れていく。その水を引いて、やはりマスのいけすが設けられている。庭のツバキやレンギョウ、そして新緑がまぶしいほどだ。いけすから逃げて増えたのか、何百匹もの稚魚が浅瀬で群れている。
この地区のマスの養殖は昭和3年までさかのぼる。戦後はアメリカに輸出するほど盛んな時代もあったという。だが今、専門でやっている人は10人に満たない。「需要は減る、エサ代は上がるで、楽ではない」と、大富養鱒漁協組合長の平沢茂さん(56)。
川の水は1年を通して10度前後。冬でも稚魚さえ外で飼育できる。「清流で育てたことをもっとPRすべきなんだろうが、なかなか…」と苦笑する。組合では鱒の甘露煮やコンブ巻きの製造にも取り組んでいる。
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山形県の東部、仙台市と接する東根市は果物の産地で知られるが、奥羽山系を源とする名水、清流にも恵まれている。花と新緑の中での“水めぐり”。(本間篤)
■イバラトミヨ トゲウオ科トミヨ属の体長5センチほどの魚。背にトゲがあり、縄張り性向が強く、湧水のある川や池に生息する。3〜7月にオスが水草で巣を作り、産卵した卵はオスが世話をする。山形県内では庄内地方などにも生息しているが、東根市と天童市のイバラトミヨは遺伝的に純血を保っているとされ、昭和61年に県の天然記念物に指定された。