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【特報 追う】難事件 解決導く科捜研
事件現場に残された血液などから個人を特定するDNA型鑑定など科学捜査が事件解決に重要な役割を果たすケースが目立っている。背景には、より正確で早い鑑定が可能になった技術の進歩や、効率的に全国をつなぐデータベース化がある。山形県でも、DNA型鑑定によって、未解決事件の解決につながるケースがあった。科学捜査の最前線を担う山形県警科学捜査研究所をのぞいた。(松本健吾)
山形県警科捜研。研究所という名の通り、実験器具や巨大な分析機材がところ狭しと並び、県警のなかでも異質な空気を放っている。
「“物”の陰には常に人がいると思え」。皆川節副主幹は、科学捜査の心構えをそう語る。科捜研は、事件現場から採取された資料を元に、分析装置や実験器具を駆使し、“物”から事件と人を結びつける根拠を明らかにするのが目的だ。
科学捜査のなかでも、飛躍的な進歩を見せているのが、人間の細胞中の核にあるDNA(デオキシリボ核酸)の型の個人差によって個人識別を行うDNA型鑑定。血液や唾液(だえき)などからの犯人特定や、指紋や顔が分からない焼死遺体の個人識別に役立っている。
警察庁によると、平成15年には、事件数ベースで1159件だったDNA型鑑定は、毎年倍ペースで増え、18年には1万1819件にも及んだ。この先も増える見通しという。警察庁担当者は「人材と設備を充実させた積極的な取り組みの成果」と語る。
警察庁は平成15年、より微量で古い資料でも、精度の高いDNA型鑑定ができる分析機「フラグメントアナライザー」を全国の警察に導入。同科捜研の原田彰専門研究官によると、4日〜1週間の鑑定期間で、4兆7000億人に1人の高い個人識別能力が可能。
さらに、警察庁では17年から、全国都道府県警の容疑者と遺留資料のDNA型をデータベース化、連続窃盗事件の他県での余罪の裏付けなどへの運用を始めている。
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DNA型鑑定が端緒になって、難事件の解決につながるケースもある。
山形県長井市で、10月、ひき逃げ事件が発生した。長井署は、自動車運転過失傷害容疑で運転手を逮捕。運転していたことを特定するため、車内の空き缶やたばこの吸い殻などから唾液を採取し、DNA型鑑定した後、データベースに照合。その結果、2年前の17年6月の米沢市での婦女暴行事件の遺留資料とDNA型が一致、県警が追及したところ容疑を認め、立件につながった。
「現在、データベースで判明する多くは窃盗の容疑者の余罪など。交通事件から、婦女暴行事件につながるのは異例。データベース化が効果的に機能したケース」(警察庁担当者)。
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科捜研では、ほかにも否認事件で活躍する、通称「ウソ発見器」として知られる「ポリグラフ」などもある。担当の山本直宏研究員は「実際はウソを明らかにするのではなく、事件についての記憶があるかどうかの検査」とする。対象者との面会は、パソコンが置かれた小部屋で行われ、一回の面会時間は面接なども含め2時間ほど。犯人しか知り得ない事実を質問し、それに対する手のひらの汗や心拍数、呼吸の乱れなどの生理反応を測定する。同じ質問を5回ほど繰り返すという。山本研究員は「記憶があれば、身体は反応するもの。測定器の精度も高まっており、確度は9割」とする。
皆川副主幹は「科捜研の仕事は、科学捜査を駆使して、犯人をつくることではない、犯人でないことを特定することも大切なこと」と、科捜研が公平中立な立場であることを強調する。
現在、事件捜査を巡り、自白の信憑(しんぴょう)性が議論されたり、市民が裁判に参加する裁判員制度の導入も控えるなか、科学捜査の重要性はますます高まっている。
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【用語解説】科学捜査研究所
全国の都道府県警察に配置されている科学捜査を専門に実験、研究する機関。山形県警科捜研は、平成10年4月、県警刑事部鑑識課から分離、独立した。DNA型鑑定を行う「法医」、覚醒(かくせい)剤や麻薬、毒物などを分析する「化学」、火災や銃器、防犯ビデオの解析を行う「工学」、筆跡鑑定や偽造紙幣の判別などをする「文書」、ポリグラフ検査を業務とする「心理」の5係からなる。現場に残された遺留資料を鑑定、分析することで犯人の特定や犯罪の立証、身元不明遺体の個人識別を目指す。同科捜研でも、DNA型鑑定件数は年々増加、平成14年には7事件74資料について行われていたが平成19年には、10月末時点で 317事件1314資料と急増している。