MSN Japanのニュースサイトへようこそ。ここはニュース記事全文ページです。
[PR]

【特報 追う】「刺し身」が握る漁業再生 メカジキのブランド化へ実験販売

2009.1.30 03:03

 先週末、仙台市内にある「みやぎ生協」6店舗の魚売り場には、淡いピンク色をしたメカジキの切り身が所狭しと並んでいた。メカジキといえば、煮付けやステーキ、照り焼きなどに調理して味わうことが多いが、この日並んだパッケージには、いずれも「刺し身用」の文字が−。実は、この「刺し身用」に近年の経営状況が悪化の一途をたどっている「近海マグロはえ縄漁業」再生への鍵の一つが隠されているという。厳しい環境の中、漁業で生き残りを図るためにはどうしたらいいのか。関係者の取り組みを追った。(豊吉広英)

 全国有数の近海マグロはえ縄漁船の基地として知られる宮城県・気仙沼港。しかし、海からの恩恵で繁栄してきたこの港も、資源減少や魚価低迷などの大波を受け、年々疲弊の色が濃くなっている。

 「平成6年ごろから魚価が下がり始め、10年ごろからは海外の漁船などの影響もあり、メバチマグロなど魚価の高い魚が三陸の漁場に来なくなった」。気仙沼遠洋漁業協同組合の熊谷秀人専務理事は現状をこう説明する。平成2年度は気仙沼遠洋所属の漁船で、計約54億7300万円の水揚げがあったが、15年度は32億4000万円までに落ち込んだ。

 危機感を感じた関係者は、宮城県とともに、経営が厳しくなっている近海マグロはえ縄漁業の状況改善を検討。経費の削減や省力化、漁獲物の付加価値向上−と、さまざまな課題が挙がるなか、実際にどうすればいいかを実証するため、気仙沼遠洋は平成18年、実験漁船「海青丸」を建造した。今回の「メカジキの刺し身」は海青丸を借り受けた独立行政法人・水産総合研究センター(横浜市)が操業を行いながら実施している、課題改善のための実証化実験の一つだという。

    ■ ■ ■

 「今、三陸の漁場で多く捕れるのはヨシキリザメとメカジキ。このうちヨシキリザメはフカヒレとして海外でもブランド化してきた」と熊谷専務理事。では、メカジキはどうか。「今は加工品という認知度が高いが、刺し身商材としてブランド化できれば販売単価も高くなり収入を上げることができる」

 気仙沼周辺では、もともと刺し身として食されることが多いメカジキ。しかし、それを全国に広めるには、刺し身としておいしく食べられるだけの鮮度を保たなければならない。それを可能にしたのが、海青丸に搭載されている“新兵器”「スラリーアイス」だ。

 海水をシャーベット状にした海水氷のスラリーアイスは、はえ縄にかかった魚を一時貯蔵する際に使用される。魚の鮮度を高めるには、捕ってから急激に温度を下げることが重要だが、冷海水や砕氷、水氷に比べて、短時間で魚を氷温に下げられるスラリーアイスを使用することで、港に水揚げ後3〜4日程度で鮮度が落ちてきたメカジキが、1週間程度まで刺し身に耐えられるだけの鮮度を保つことができるようになるという。

 海青丸には、魚の鮮度を高めるための技術以外にも、さまざまな工夫がみられる。例えば、省力化のためにはえ縄の巻き取り方を改良。これで、従来16人だった乗員を14人へ減員が可能になった。また、低回転大直径プロペラや抵抗の少ない船体にすることで、燃料消費量も10%削減した。居室や通路などの天井を高くするなど、居住性向上も図り、漁業離れが進む若者対策も施されている。

 海青丸が捕ってきたメカジキの評価が高まり、経費節減効果が表れ、漁業に再び脚光が集まれば−。海青丸とメカジキの刺し身には、そんな漁師たちの期待が込められている。

    ■ ■ ■

 これまでのところ、メカジキの刺し身の評判は上々のようだ。みやぎ生協では23、24の両日にメカジキを試験販売したところ、売り切れ店が続出。刺し身の売り上げが普段の3、4倍に伸びたという店もあり「予想以上に好評だった」(みやぎ生協総務部)という。みやぎ生協では3月まで月1回のペースで、海青丸が漁獲した鮮度の高いメカジキを試験販売していきたいとしている。

 熊谷専務理事は「食の偽装がクローズアップされているが、完全天然物のメカジキは、養殖物が多いハマチよりも安心安全の面では強いはず。今がチャンス」と自信をのぞかせている。

      ◇

 ■メカジキの刺し身 スズキ目メカジキ科に分類されるカジキの一種で、他のカジキに比べ、目が大きいところからその名前がついたと言われるメカジキ。非常に長い剣のような形の吻(ふん)と呼ばれる上あごが特徴。実際に刺し身を食べてみると、しっかりと脂が乗っていて、歯応えはありながらも口のなかでとろけるような味わいだ。気仙沼遠洋の熊谷専務理事は「旬は10月末から3月。この時期ならハマチ以上においしい」と自信を持っている。

 メカジキの刺し身の試験販売を行っているみやぎ生協の店舗は、桜ケ丘店▽愛子店▽幸町店▽榴ケ岡店▽八木山店▽八幡町店。問い合わせは生協総務部(電)022・771・1590。

[PR]
[PR]
PR
PR

PR

イザ!SANSPO.COMZAKZAKFuji Sankei BusinessiSANKEI EXPRESS
Copyright 2009 The Sankei Shimbun & Sankei Digital
このページ上に表示されるニュースの見出しおよび記事内容、あるいはリンク先の記事内容は MSN およびマイクロソフトの見解を反映するものではありません。
掲載されている記事・写真などコンテンツの無断転載を禁じます。