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【特報 追う】仙台老人ホーム火災(上) 重軽傷33人「最小限だった」 コストや法制遅れ…防災なお発展途上

2008.11.22 03:33

 13日未明、仙台市若林区の有料老人ホーム「六郷の杜」で発生した火災は、計33人が重軽傷を負う事態となった。老人保健施設の夜間火災は、避難が遅れれば甚大な被害が生じる可能性が高く、今回の火災被害を「最小限だった」と分析する専門家もいる。それだけ、現在の老健施設は、火災に対し脆弱(ぜいじゃく)な側面がある。2回にわたり、老健施設の抱えるハード、ソフト両面の防火上の課題を検証する。(高山豊司)

 朝夕の冷え込みが厳しさを増していた13日の午前1時半ごろ、鉄筋コンクリート2階建ての有料老人ホーム「六郷の杜」(運営・ケアミックス・ジャパン)1階居室から火の手が上がった。出火当時、施設には70〜 102歳まで39人の入居者と3人の職員がいた。

 火災に気付いた職員は、入居者を戸外に避難させる一方、初期消火を試みた。火災を検知すると自動的に 119番通報する高機能型警報機も作動。消防車など29台が駆けつけ、1時間後には鎮火した。焼失面積は、火元とみられる1階居室と廊下の一部、計17平方メートルにとどまったが、33人が病院に運ばれ、職員1人を含む12人は顔のやけど、煙を吸ったことによる気道熱傷などを負った。大量に発生した煙が、人的な被害を拡大させた。

 過去の老健施設などでの火災を教訓に、一定規模以上の施設では、年1回以上、消防署の査察が行われている。六郷の杜もその対象で、所轄の若林消防署は9月に査察を実施し、「問題なし」と評価していた。

 昨年1月の査察で、同消防署は、入居者が持ち込んだ「のれん」に防炎処理がされていないことなど3つの改善点を指摘している。六郷の杜では翌2月までに改善し、消防署もこれを確認した。しかし、のれんのみならず、時に危険を生じさせる品物は室内にあふれていた。

 「布団や枕、パジャマ、壁紙など、実は老健施設の居室には火元となるだけでなく、大量の煙を発生させるものが少なくない」。消防関係者はそう指摘する。

 繊維に燃えにくい物質をコーティングした防炎寝具なども売り出されているが、使用するかどうかは施設の判断に任されており、法的な規制はない。防炎寝具は「価格が高い」、「ごわごわして肌触りが悪い」といった難点もあり、日本防炎協会(東京都中央区)によると「普及は進んでいない」(技術部)という。

 六郷の杜でも「布団は通常の市販品を使用している」という。今回の火災の出火原因は調査中だが、入居者が持ち込んだたばこの火が、布団類に燃え移った可能性が高く、煙による被害を拡大させた一因ともみられている。居室での喫煙やライターの持ち込みは施設側で禁止しているが「監視体制にも限界がある」(同施設関係者)のが実情だ。

 六郷の杜では、スプリンクラーが設置されていなかったが、構造的な工夫で延焼を防ぐ仕組みをとっており、「それ自体は適法」(若林消防署)という。先の消防法の改正で、すべての老健施設の居室にスプリンクラーを設置するよう義務づけられたが、施行は来年4月からで、既存施設についてはさらに3年程度の猶予期間がある。

 老健施設でスプリンクラーが普及してこなかった理由の一つは、コスト負担だ。通常のスプリンクラーは、専用のタンクやバルブ、配管、制御盤、非常用電源の併設が必要で、数千万円のコストがかかる。小規模施設では導入が難しい。

 これに対し、防災機器メーカーでは水道管に直結する簡易型のスプリンクラーを開発中で、「 300万円程度で導入できる」(大手メーカー)見通し。ところが この方式の機種は、消防庁などの規格が固まっておらず、メーカーの製品化に「待った」がかかった状態だ。

 水道管に直結する以上、上下水道への影響も考えられ、「水道局などとのすり合わせに時間がかかっている」(消防庁関係者)。老健施設を取り巻く防災上の法規制やハード面の環境は、いまだ発展途上といえる。

 ■老人保健施設 滞在型の老人保健施設には、特別養護老人ホーム(特養)のような自治体や社会福祉法人が設置主体となる施設のほか、有料老人ホーム、グループホームなど、民間主体の施設に大別でき、提供するサービスの種類などによって、さらに細かく分類できる。六郷の杜は、介護サービス付きの民間有料老人ホーム。

 医療費削減の観点から、厚生労働省が、それまで高齢者の受け皿となっていた病院の長期療養病床を大幅に削減する方針を打ち出した。代わりに、介護に係る費用を公的に負担する介護保険制度が導入され、これを利用し、比較的安価に入居できる民間の老健施設が増加している。

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