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【特報 追う】往年の名車に“命”吹き込む 東北大有志
老朽化や劣化で動かなくなった自動車を修復し、走行可能にするレストア。東北大の教職員や学生などがボランティアで約80年前の米国のクラシックカーのレストアに取り組んでいる。仙台市青葉区のキャンパス内に、このクラシックカーなどの展示場が11月1日にオープン。当日の開所式で試走する予定で、本番での成功に向けボランティアチームの熱の入った作業が続いている。(石崎慶一)
今月18日午前、東北大の青葉山キャンパス内の駐車場。黒色の車体のクラシックカーがゆっくりと動き出した。見守るボランティアチームから拍手が起こる。だが「走り」は長く続かず、 500メートルほど走ったところでエンスト。エンジンはかからず、スタッフは車に駆け寄り、原因解明にあたった。
この日はレストアに取りかかってから、初めての試運転だったが、「ほっとした。意外に普通に運転できる」。ハンドルを握った同大大学院工学研究科の田中秀治准教授(37)は安堵(あんど)の表情を浮かべた。
チームのリーダー、田中准教授によると、クラシックカーのレストアに至った経緯はこうだ。田中准教授が所属する研究室に、ある会社から研究員が派遣されたことが縁となり、その会社の社長のクラシックカーコレクションのうち2台が寄贈されることになった。平成17年にキャンパスに運ばれたが、その後しばらく研究棟に置かれたままになっていた。
寄贈されたのは、米国・フォード自動車製のT型(1926年製)とA型(1931年製)で、いずれも一時代を築いた人気車種。せっかくの名車も学内だけで知られる存在となっていたが、「広く市民に公開しよう」と展示場を建設することになった。展示場は今年3月に完成、クラシックカーも移された。
田中准教授は今年度、展示場の担当となり、開所に向けて準備を進めてきた。車は長い間走行しておらず、動く状態ではなかった。そのまま展示する予定だったが、「走るようにすれば」の声が周囲から聞こえるようになった。寄贈した社長も「動くこと」を願っていたこともあり、9月にレストアのボランティアチームを立ち上げ、「車好き」の大学の職員や学友会自動車部の学生など5人が参加した。
スタッフはいずれも“工学”だが、「自動車工学」は専門外。自動車部員もいまの車の整備は経験しているが、クラシックカーのレストアは初めて。「レストアを専門業者に丸投げすることもできるが、それでは“機械系”のわれわれの面目丸つぶれ」と田中准教授。だが学内に自動車工学の専門家はおらず、他大学の専門家から、かつてトヨタ博物館に勤務し多数のクラシックカーのレストアを手がけたエンジニアの鈴木三郎さん(63)=愛知県豊田市=を紹介してもらった。
鈴木さんの指導を受け、チームは今月から展示場を作業場に本格的にレストアに取りかかった。先にエンジンがかかったA型の方を本番で走らせることを目標にした。念入りに作業し、エンジンの始動も順調だったが、18日の試運転では、走行したことで新しい振動が車体に加わり、燃料タンク内のサビなどが剥離(はくり)したらしい。ガソリンを供給する通路がふさがれ、何度もエンストを起こした。その度に除去したが、本番に向け燃料供給が課題となった。
「レストアではよくあること。トラブルへの対処方法を覚えることが大事で、今後、車が動く状態で保存していく上でも重要となる。このスタッフなら課題もクリアし、本番は大丈夫だろう」と鈴木さんは語る。
レストアはスタッフの学生などにとって貴重な経験となっている。同大大学院工学研究科の修士課程2年、安藤祐介さん(28)は「部品を見ていて、やがてこれが進歩していくんだなと思うと面白かった」。工学部4年の西本達矢さん(22)は「作業は難しいところもあったが、普段触れない車なので新鮮だった」。同3年の大木裕介さん(20)は「自分で整備する際に生かせるところもだいぶあり勉強になった」。
今後はもう1台のT型の“復活”も目指す。田中准教授は「大学のイベントなどで動かしながら保存していきたい。展示場は中に入って車に触ったり、車に乗って記念写真を撮れるようになれば」としている。
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■クラシックカーなどの展示場 「自動車の過去・未来館」。床面積約56平方メートル。2台のクラシックカーのほか東北大創立 100周年を記念してトヨタ自動車から寄贈されたF1レーシング用エンジンなどを展示。入場無料。開所式ではトヨタ自動車モータースポーツ部の高橋敬三部長とクラシックカーを寄贈したオプトエレクトロニクスの俵政美社長が講演する。