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【特報 追う】「コメ農政」救う!?巨大市場 中国輸出解禁後も課題多く

2008.5.19 02:12

 破綻(はたん)寸前のコメ農政を救う切り札となるのか−。中国へのコメ輸出の全面解禁が決まった。国内で消費が減り続ける状況下、年間1.3億トンものコメを消費する巨大市場は極めて魅力的だ。早ければ6月にも本格化する。東北農政局も乗り気というが、この輸出、どうも一筋縄ではいかないようだ。 (山口圭介)

 日中首脳会談があった7日、両政府は、日本産米の対中輸出を全面解禁することで最終合意した。

 コメの輸出は、中国の検疫体制の見直しによって平成15年にいったん停止されていたが、昨年6月から燻蒸(くんじょう)処理などを条件に数量限定で暫定的に再開していた。

 農水省は「これまでに3回行われた暫定輸出は、JA全農と中国の穀物貿易大手『COFCO』の間だけで取引されてきたが、最終合意で他のコメ販売業者にも門戸が開かれる」と説明する。

 コメの年間需要量約800万トンのうち、商業用輸出は年約940トン(平成19年)で、全体の1%にも満たない。需要減で危機にひんする日本のコメ農政にとって、対中輸出は生産拡大の起爆剤と期待される。

 東北農政局のアンケート調査によると、海外からの留学生の間でもコメは大人気で、帰国しても食べたい農水産物で見事1位に選ばれている。

 同局はコメをはじめ東北の特産品の輸出促進に取り組んでおり、全面解禁を「輸出拡大の絶好のチャンス」ととらえている。暫定輸出でひとめぼれ32トンの輸出実績がある宮城県も「輸出増につながるよう、輸送や保存などの面で支援できれば」としている。

 しかし、「全面解禁で一気に輸出が増える状況ではない」とみるのは、中国進出を支援する「アクアビジネスコンサルティング」の高田勝巳社長。「価格があまりにも違いすぎる」とその理由を続けた。

 暫定輸出では、まず昨年6月に24トンを輸出、同12月、今年1月にそれぞれ50トンが追加輸出された。第1便こそ完売したが、残り100トンのうち販売済みは約40トン(4月末)にとどまっている。

 農水省は「当初は珍しさから富裕層に人気を集めたが、価格が中国産に比べ10〜20倍と高価なため、販売が伸び悩んでいる」と説明する。 

 課題は価格だけではない。「すでに中国では『コシヒカリ』や『ひとめぼれ』が生産されている。日本産米に近い品質のうえ、かなり割安で販売されている」と高田社長。「越光」「一目惚」の漢字名で商標登録されており、日本産米はブランド戦略でも苦戦を強いられそうだ。

 また中国側でコメを取り扱える輸入業者は数社に限られ、流通マージンの高さや販売まで長期間かかることなども指摘されている。

 暫定措置で日本側の輸出を担ったJA全農輸出対策室は「まだ認知してもらう段階。実際どれほどの需要が見込めるのか、まったく見えておらず、調査が必要」と早急な実態把握を説く。

 JA全農米穀部は「中国は元々世界最大のコメ生産国で、食べ方は日本とは大きく違う。日本のコメのおいしさを伝えるには炊飯器から用意しないといけない。価格差が大きい中で、どれだけ中国産との差別化を図っていけるか…」。当面は中国国内で急増する富裕層をターゲットに贈答用の需要を掘り起こしていく考えだ。

 高いハードルに尻込みしたのか、「暫定輸出が決まった昨年は複数の業者からコメの輸出で問い合わせがあったけれど、今はさっぱり」と高田社長は話す。

 輸出は間もなく本格スタートするが、実行するには中国に指定された精米工場と倉庫を通さなければならず、他の精米工場を通じて輸出するには工場内に害虫がいないか1年かけて調べる必要がある。日本側は一定の譲歩を引き出したとはいえ、中国側からは燻蒸処理義務化など厳しい条件が設定されており、交渉上手の中国にうまくやられたと見る向きもある。

 日本政府も国内でコメの生産調整に躍起になるだけなく、輸出拡大を後押しする戦略的な支援を打ち出してはどうか。

                   ◇

 ■コメの海外輸出

 平成19年の輸出量は約940トン。内訳は、台湾450トン、香港218トン、シンガポール92トン、米国41トンなどで、近年急増している。背景には、平成25年までに農林水産物の輸出額を1兆円に増やす目標を掲げた政府が、コメ輸出にも力を入れ始めたことがある。中国は世界最大のコメ消費国でもあり、輸出拡大に成功すれば経済効果は計り知れない。

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