MSN Japanのニュースサイトへようこそ。ここはニュース記事全文ページです。
[PR]

【酒屋万流】(4)手作業の魅力 若い夫婦挑む

2008.5.11 02:55

 長年、杜氏(とうじ)を中心とした蔵人集団が担ってきた酒蔵の仕事、その奥深さに魅了され、酒造りの世界に飛び込んでくる未経験者が増えている。

 4月上旬、宮城県の米どころ大崎平野に蔵を構える寒梅酒造の若い夫婦が、慣れない手つきで土の入った苗箱に稲の種をまいていた。今月10日には酒蔵の前に広がる水田で、田植えにも挑戦した。

 「米作りから一貫した酒造りがうちのやり方。作り手の顔が見える酒蔵にしたいんです」と2人は声をそろえる。

 東北福祉大(仙台市)を卒業後、蔵で働き始めたばかりの寒梅酒造の長女、岩崎真奈さん(23)と、夫の健弥さん(24)だ。

 真奈さんは4姉妹の長女。「子供のころから家業を継げといわれたけど、蔵が嫌いで酒造りを自分がするなんてまったく考えてもいなかった」という。実際、2人は蔵に入る前、それぞれ別のアパレル会社に就職の内定を得ていた。

 ところが「勤めようという会社がどういう思いでモノを生産し売っているのか、作り手の気持ちが見えなかった」。蔵の中に入ることすら嫌がっていた真奈さんだが、就職活動によって初めて、米から酒造りを手がける家業の魅力に気付いたという。

 2年前の大学4年のとき、内定企業に対し同じ違和感を覚えていた婚約者の健弥さんと、蔵で初めて働いた。2人は酒を搾る「槽頭」などを手伝った。「単調な作業の繰り返し。だけどその1つ1つの作業に意味があって、奥が深かった」。2人で蔵に入ろうと決めた。

                  ◇

 寒梅酒造は、家族中心の蔵で、県内でも2番目に小さい。それでも酒造りの基本は米だとして、自家栽培にこだわり、2町2反歩の自社田で、「美山錦」や「愛国」など数種類の酒米を栽培してきた。純米酒造りにも県内でいち早く取り組み、東京にも出荷していたという。

 しかし重量感のある昔ながらの酒だったため、時流から取り残され、2人が働き始めたときには売り上げが大きく減っていた。

 若い2人が入ったことで、「何のために酒を造るのか、もう一度確認しよう」と、家族で侃々諤々の議論を繰り返した。真奈さんはこれまでの酒造りをさらに進ませることを主張し、社長兼杜氏の父、隆聡さん(49)を説得。「米作りから手作業にこだわった酒造り」を改めて再確認した。自家栽培の米の割合を現在4割から、さらに高めていく考えだ。

 商品も集約し、40近くあった銘柄を、今シーズンは約20銘柄に減らした。従来の酒と並行して、新たに飲み口のスッキリしたキレのある純米酒造りにも取り組んだ。販売先も、蔵の酒造りに共感してくれる店を中心にすることにした。

                  ◇

 2人とも学生時代に酒造りを学んでいたわけではなく、健弥さんはいわば門外漢。越えねばならない課題は多い。

 「1人前になるまで10年はかかる世界。時間が足りない。1日1日、体で覚えていかないと」。そう語る健弥さんは、今シーズンから「釜屋」を担当。原料となる米を洗い、水に浸して蒸すまでの責任を担った。隆聡さんやベテランの蔵人の指導を受けながら、まさしくゼロから酒造りを学んでいる。

 しかし2人の若い感覚に期待する関係者は少なくない。寒梅酒造の純米酒を仕入れている和食店「一心」(仙台市)の吉本伯巳さん(33)は「娘さん夫婦が造りに加わったお酒は、これまでの味わいと違って、香りがスッキリしたさわやかな飲み口。『若い人にお酒を飲んでもらいたい』という蔵元の思いが伝わってきた」と話す。

 「学生時代、日本酒は飲み会で酔いつぶれるための“道具”でしかなかった」と真奈さんがいうように、日本酒と聞いただけで拒否反応を示す若者は多い。健弥さんは「自分たちが造った酒で、そういった日本酒に対する固定観念を変えることができれば」。若夫婦の夢は膨らむ。 (山口圭介)=おわり

                  ◇

 ■酒造りに適した米 酒造好適米と呼ばれ、食用米と比べ粒が大きく、保水力に優れている。中心部に白色で不透明な心白(しんぱく)という部分があり、純米酒などは精米して、この部分だけを取り出して使う。このため、心白が大きく、削っても砕けない粘り気が強い米がいい酒米の条件。「山田錦」「五百万石」「美山錦」などが有名。

[PR]
[PR]
PR
PR

PR

イザ!SANSPO.COMZAKZAKFuji Sankei BusinessiSANKEI EXPRESS
Copyright 2008 The Sankei Shimbun & Sankei Digital
このページ上に表示されるニュースの見出しおよび記事内容、あるいはリンク先の記事内容は MSN およびマイクロソフトの見解を反映するものではありません。
掲載されている記事・写真などコンテンツの無断転載を禁じます。