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【特報 追う】アーバちゃんと家族(下)日本の生活へ進む準備  

2008.5.2 02:22

 ■問題山積み…絆深め立ち向かう4人

 東北大学病院から歩いて5分ほどのところに、アーバちゃんの父、アルンさんと弟、アバス君が暮らすマンションがある。

 見晴らしのいい2Kの部屋。整頓された室内には、帰国する留学生から格安で譲ってもらった冷蔵庫や洗濯機。窓際にはやはり知人からもらったというシングルベッド。このベッドで、アバス君と2人、丸くなって寝ているのだという。

 入院中のアーバちゃんと、一緒に病院内で寝泊まりしている母、バワニさんも、じきにここで暮らすことになる。現在は週末の2、3時間ほど外出許可をもらったアーバちゃんが遊びに来るが「いつもうれしそうに姉弟で遊んでいるよ」とアルンさん。そんな様子を見ていると、もう少し広い部屋が必要なのかな、と思うこともあるようだ。

 主治医の天江新太郎准教授らは、アーバちゃんの状態が徐々に安定してきたことから、6月ごろから在宅治療に切り替える方針で、現在はそれに向けた準備を着々と進めているという。

 アーバちゃんには、退院後も静脈に挿したカテーテルから高カロリー輸液を投与する中心静脈栄養法(PN)が続けられる。栄養量を変えないまま投与する時間を徐々に短くすることが、病院外で生活するための第一歩となる。

 栄養を吸収する役割を持つ小腸がないアーバちゃんだが、希望の見える検査結果も出ている。30センチ弱ほど残っていた十二指腸が予想外に栄養を取り込んでいるようなのだ。「現在必要な栄養の半分程度は、食事や胃につないだ管から取れている」と天江准教授。時間をかけ、PNで投与する栄養量を減らし、ネパールに帰国できるめどがつかないか。医師団は、そんな期待を抱いている。

    ■  ■

 一方、一家が生活をしていくうえで徐々に大きくなってきた問題がある。家族の、特にアルンさんの就労問題だ。

 アルンさんはネパールで地元のタバコ製造販売会社でセールスや配送トラックの手配などをしていたが、今回の一時帰国で会社に自ら「自分のポジションに他の人を置いてほしい」と話してきた。いつ帰国できるか分からない状態では、職は手放さざるを得ない。

 アルンさん自身は、日本で働くことを希望している。家族の生活が基金で賄われていることに対し感謝しつつ、「自分でもなんとかしたい」という気持ちも強いという。しかし来日にあたり、日本政府が発行したビザは、あくまでも「アーバちゃんの治療のため」であり、就労はできないと明記されている。

 毎日、アバス君を小学校に送り、病院へ向かい、マンションへ戻り、家族の食事を作る。でも、こういう生活ではなく、できれば一家を支える立場として働きたい。アルンさんは、仕事について聞かれると、暗い表情でこう応えているという。「イッツ、メーンプロブレム」と。

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 「これ違うよ」。アバス君と2人で遊んでいるアーバちゃんは、慣れない生活にとまどうアバス君に対し、すっかりお姉さんの顔で、日本語や習慣を教えている。以前よりふっくらしてきた顔に浮かぶ笑顔は、以前にも増してリラックスしている。

 一家に対するサポート態勢は徐々に整ってきている。アバス君には、仙台市が小学校に言葉や生活を指導する担当者をつけてくれた。学校の様子を問われると笑顔で「楽しい」とうなずくアバス君。東北大学病院では、生活環境の急激な変化で家族に見えないストレスが出ることを懸念し、精神科の医師の手助けを借りる方針だ。同科の本多奈美医師は「いろいろな話を聞き、家族によりよいケアをしていきたい」と話している。

 ただ“本番”はこれからだ。アーバちゃんは6月に病院を出た後、2学期からアバス君と同じ小学校に通う。病院という狭い世界から一般社会に触れたとき、本当の意味での「日本での生活」が始まる。一家にどのような世界が待ちかまえているのだろう。家族4人が笑顔で困難に打ち勝ってくれることを祈りつつ、天江准教授ら関係者は、その行く末を見守っている。(豊吉広英)

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