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【特報 追う】三セク鉄道最新事情(上) 三陸鉄道“地元の鉄路”へ原点回帰

2008.11.28 03:36

 沿線人口の減少やコスト増などで苦しい経営を強いられている第三セクター鉄道。岩手県内を走る三陸鉄道(三鉄)、IGRいわて銀河鉄道の2社では、従来の鉄道の発想を超えた生き残り策に挑んでいる。初回は開業25周年を来年に控え、“地域のレール”の原点を取り戻そうと必死に模索している三陸鉄道の取り組みを紹介する。(中川真)

 「5年後の輸送人員は10万人以上減り90万人に」「経常損失は計8億円」「岩手県と沿線市町村負担が13億円超」…。

 こうした見通しをもとに三鉄は今月、平成21年度から5年間の経営改善計画案を固めた。20両の保有車両を4両減らし、乗客の少ない昼間の運行本数を間引きするなど、コスト削減を主眼にした厳しい内容だ。

 山口和彦社長は「乗客減、ディーゼルカーの燃料代高騰の2つが響き、JR福知山線脱線事故を受けた安全対策の設備投資も大きい」と強調する。

 昭和59年、旧国鉄から転換した初の第三セクターとして注目を集めた三鉄だが、沿線人口はこれまでに2割近くも減少。その結果、輸送人員も開業年度の 269万人をピークに“右肩下がり”を続け、平成19年度には 104万人まで落ち込んだ。

 今年度は2度の地震で観光輸送が大打撃を受けた。来年度も県立高校再編で沿線の釜石商と市街地の釜石工が併合し、通学客減少による1000万円程度の減収が懸念されている。

 燃料の軽油高騰も深刻だ。今夏は1年前の2倍、3年前の3倍にあたる1リットル=114円(非課税)に達した。10月には同 104円に落ち着いたが、三鉄は昨年度6390万円だった燃料代が今年度、「1億円を突破する見込みだ」としている。1億円強の単年度赤字が続いている同社にとって、3000万円近いコスト増は

緊急事態と言っていい。

 「市町村回りを徹底し、地域のイベントにも積極的に参加しろ。参加するだけでなく、三鉄の存在をアピールしよう」

 山口社長は全社員に「地域との連携」を訴えている。それも、単なるお題目や利用促進のお願いだけでなく、「三鉄は地域振興に欠くべからざるもの」と住民に実感してもらうことが重要だという。

 その一環として近く発表するのが、「プレ開業25周年『沿線厳選GIFT』」と題した特産品の通信販売。今後は夏・冬ごとに売り出していく方針だ。

 ギフト通販はこれまでもあったが、今回の“ミソ”は社員が約60アイテムの商品の推薦者となったこと。パンフレットに実名や写真入りで、「私は贈答用の魚介類はこの店でしか買いません」(総務部長)、「近所のおばあちゃんが大好きな黒豆ケーキ」(久慈駅スタッフ)といった生活感ある紹介文を寄せている。

 こうした戦略を主導しているのが、今年春に総合企画室長に就任した草野悟氏だ。大手広告代理店で多くのイベント・プロデュースの経験を持ち、県の中核観光コーディネーターとして派遣されている。

 草野氏は来年、25周年に合わせて「 100近い手作りの観光商品を企画したい。記念式典に命をかけるのでなく、社員総ぐるみで知恵を出し合い、観光客のライフスタイルに合った企画を途切れることなく打ち出していく」と意気込む。

 キーワードは「着地型」と「仙台ターゲット」。着地型観光は、地域が自ら地元ならではの視点で企画する手作りの旅行商品で、体験などを盛り込んだものが目立つ。

 草野氏は「例えば、沿線には冬のオジロワシや夏のホタルなどが観察できるスポットもたくさんある。そうした所にお連れして、専門家にガイドしてもらうようなアイデアだ」と話す。

 三鉄では、まず岩手県内、次に仙台圏に売り込みをはかる。首都圏も重要だが、すでにお座敷列車などの運行や旅行会社へのセールスが実を結び、昨年度には5年前の5倍にあたる約8万4000人の団体客を得ている。

 しかし、そうした成果も地元客減少や燃料高を補うには至らない。そこで、県内や仙台など東北各地の人たちに乗ってもらう「原点回帰」(草野氏)が求められている。

 三陸を多少なりとも知っている人たちの足を向けさせるのだから、「魅力を再発見してもらえるような商品と高いホスピタリティー(もてなしの心)が不可欠」(同)だという。

 仙台圏では、大手旅行会社だけでなく、中堅の貸し切りバス会社に小規模の団体向け商品を売り込むなど、きめ細かい営業を展開したいとしている。

 三鉄を支える社員の待遇は、2年連続の給与カット、ボーナスなしと厳しい。それでも、多くの関係者は「みんな『重役』ならぬ『十役』の気概を持って働いている」と話す。ワンマンカーの運転士は、駅や車内の清掃、車窓ガイド、車内トイレの汚物搬出までをこなす。

 現場社員がギフトや観光企画に積極的に参画する気風も「十役」の延長線上にある。サバイバルをかけた「25周年」への取り組みは始まったばかりだ。

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