ニュース:地方 RSS feed
【特報 追う】岩手競馬 再建へ馬場重く…委託拡大見送り 人馬流出、コスト減は限界
岩手競馬を運営する岩手県競馬組合(管理者・達増拓也知事)は、経営再建に向けて進めていた情報関連会社、日本ユニシス(本社・東京)との民間委託拡大交渉について、「ユニシス案では事業継続の見通しが立たない」として、来年度は委託拡大を見送ることを決めた。これにより、岩手競馬は引き続き収支均衡を存続条件とする現行方式で実施されるが、世界的な景気減速で来季は今シーズン以上に厳しい経営が予想されるだけに、再建の道のりは容易ではなく、抜本的な改革が求められそうだ。(石川裕司)
民間委託拡大は、長引く景気低迷で岩手競馬の売り上げが減少一途で推移していることが背景にある。
競馬組合は18年度、単年度で赤字が出たら即廃止という存廃基準を設けて構成団体の県、盛岡、奥州両市から総額330億円の融資を受けた。金融機関からの債務を一括返済し、金利負担などをなくして赤字体質を脱却するのがねらいだった。
しかし、19年度に入っても売り上げ減に歯止めはかからず、賞典費や出走手当、人件費などを引き下げる3度のコスト調整でどうにか単年度黒字を確保したものの、競馬関係者からはこれ以上の削減は限界があると不平不満が噴出していた。
このため、組合では打開策として今年初め、競走関係以外の業務を包括的に民間委託する方針を決定。公募で企画提案を募り、5月には委託先候補としてユニシスを選定した。
ところが、ユニシス側は交渉にあたってノウハウやアイデアの流出が懸念されるとして、具体的な業務内容を提示する前に秘密保持(守秘義務)契約を結ぶよう要求。構成団体と提示内容を検討する必要があるとする組合側と主張はかみあわず、交渉は当初から難航した。
その後、組合はレース数など競走体系、賞典費、初年度の収支見通しの3項目の情報を公開すれば秘密保持契約を締結することを提案。これに対し、ユニシスは10月14日、競走体系など2項目の一部の情報を開示したが、収支見通しは「(組合から現在業務を委託されている)企業と交渉できていない」などとして提示しなかった。
このため組合は、ユニシスとの交渉を見送る方針を決定。1日に開かれた組合議会で、達増知事は、(ユニシスの提示は)収支計画が示されておらず、事業継続の見通しが立たない▽現行方式と比較して開催日数・レース数が大幅に減少することから、馬資源の流出や賞金・手当の減額が想定され、雇用確保や地域経済に大きな影響を与える可能性がある−などとして、来年度は民間委託拡大を実施しないことを表明した。
組合の宮一夫事務局長によると、ユニシス案について馬主や厩(きゅう)舎関係者から意見を聞いた結果、開催日数・レース数の減少で馬資源(10月末現在で781頭)が200〜300頭の流出が見込まれるほか、厩舎関係者(調教師、騎手、厩務員)の約3分の1が失業し、就労環境が悪化する恐れがあるという。
ユニシス案をめぐっては「優勝劣敗の考えは競走馬の質を高め、魅力あるレースにつながるので一定の評価はできる」と理解を示す人もいたが、結局「レース数、賞典費などの削減は(競馬ファンへの)サービス水準の大幅ダウンに直結する。どう考えても、いまのやり方の方がいい」(達増知事)との判断で見送られた。
一方、組合のまとめでは10月末までの岩手競馬の発売額は自場、広域委託、インターネット発売を合わせて158億4500万円、計画達成率101・2%と目標をクリアしている。しかし、これは6月に発売額を計画より8%(4億3200万円)下方修正しているためで、前年同期の売り上げ(173億4200万円)に比べると8・6%もダウンしている。
また、存廃基準を定めた新計画がスタートした19年度には馬は約860頭、世話をする厩務員などは約220人いたが、10月末現在で馬は約780頭、厩務員も約180人に減少。馬主は約200人、騎手も5人が岩手競馬から去っている。昨年度の3度にわたるコスト削減の影響とみられている。
収支均衡を存続条件としている現行方式では、売り上げが計画に達しない場合は年度途中にコスト削減で調整してきたが、これ以上の削減は馬資源、関係者の流出につながりかねないのが現状だ。
組合では今後も民間委託拡大の可能性を検討するとしているが、達増知事は「こういう経済情勢の中では、民間の地方競馬への参入は難しいと思う。関係者間で協力し合って地に足のついた改善策を探っていきたい」と述べ、当面は(現行方式による)地道な経営努力で黒字確保を図る考えを示している。