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【特報 追う】岩手・深沢晟雄資料館開館 名村長の精神後世へ
■「命の尊さ」発信する拠点に
全国初の老人医療費無料化などを推し進めた旧沢内村(現・岩手県西和賀町)村長、故深沢晟雄(まさお)氏(1905−65年)の業績を顕彰する「深沢晟雄資料館」が、西和賀町沢内に開館した。「生命尊重こそ政治の基本」の信念のもと、病や貧困から村民を守ることに命をかけた深沢氏の精神を学び伝える施設で、関係者は「命を軽視する風潮が強い昨今、命の尊さを発信する拠点にしたい」と意欲を燃やしている。(石川裕司)
資料館を整備したのは町民有志で結成した特定非営利活動法人(NPO法人)「深沢晟雄の会」(太田祖電理事長)。
今年初め、太田理事長が「深沢元村長が亡くなって40年以上経過し、当時を知る関係者も高齢化している。早い機会に、深沢氏の功績を後世に伝えよう」と呼びかけたところ賛同者が集まり、6月下旬にNPO法人を設立した。
旧沢内村役場(現・西和賀町役場沢内庁舎)近くの国保沢内病院敷地内にあり、豪雪モデル住宅第1号の旧看護婦宿舎を町から譲り受け、日本宝くじ協会からの助成金2100万円と町民などから寄せられた篤志金合わせて約2500万円をかけて資料館(木造2階建て、延べ床面積122平方メートル)に改築した。
並行して進められた資料収集にあたっては、深沢氏の遺族から衣類、手帳、手紙、写真など500点余りが寄贈された。深沢氏が着用していた背広やコートは所々がすり切れ、手帳には日程が余すところなく書き込まれているなど「名村長」の激務がうかがい知れる。
深沢氏が村長時代に使用していた執務机やいす、電話なども旧村役場を解体した業者によって保管されていたこともあり、集まった資料は約1000点にのぼった。
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今月19日に行われた開館式には、町民や関係者など約150人が出席。館内に展示された深沢氏の等身大のパネルや写真、メモ書き、執務机などを感慨深そうに眺めて回った。
式であいさつした太田理事長は「多くの貴重な資料が遺族、町民の協力で集まった。資料館は命の尊さ、人と人とのつながりを大事にした深沢精神を発信していくことを使命としている」、高橋繁町長も「深沢氏は生命の格差をなくすことに全精力を傾注し、住民の生命を守るために自分の命をかけた。住民にとっては、偉大で身近な存在だった。私も深沢氏の理念の具現化に努めていくことを誓う」と決意を述べた。
また、東京都からかけつけた深沢氏の孫の佳道さん(45)は「私も福祉関係の仕事をしているが、資料の整理をしていて改めて祖父のやってきたことはすごいことだと感じた。地元でも祖父の記憶を持っている人が少なくなっており、資料館ができたのは私たち遺族にとってもうれしく、感謝している」と感無量の様子だった。
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深沢氏が保健医療の充実に力を注ぎ、初めて導入した老人医療費の無料化は、国保沢内病院を拠点にその後も長年にわたって引き継がれ、西和賀町(旧湯田町と旧沢内村が合併)が発足した平成17年11月直前まで続いた。
この間、同病院では産婦人科などが医師不足で閉鎖されるなど厳しい運営を強いられたが、村の財政支援を受け住民の支えとなってきた。17年6月には常勤医師が1人となり、入院患者受け入れ中止という事態にも直面したが、現在は常勤3人に近隣からの医師の応援派遣を得て24時間救急医療病院として機能している。
佐々木一事務局長(51)は「さまざまな要因はあるが、自治体病院は経営的に不採算のところが多い。沢内病院もやりくりが大変だが、深沢精神を受け継ぐ病院であり、行政の責任で長く存続させることを願っている。その意味でも資料館ができたことは大変うれしい。今後も資料館とともに生命尊重の理念を発信する場としたい」と期待を込めて語った。
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■乳児・老人医療費無料化
深沢氏は東北帝大(現東北大)文学部を卒業後、沢内村に帰郷。村教育長、助役を経て昭和32年に村長に就任した。「生命尊重」を村政の基本に掲げ、村民の健康状態把握から医師・看護婦の確保まで医療福祉の向上に尽力。35年には全国に先駆けて乳児と老人(60歳以上、36年以降は65歳以上)の医療費の無料化を実現。37年には国内初の乳児死亡率ゼロを達成した。深沢氏は2期目の40年、がんのため60歳で死去した。