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【特報 追う】東北の医療(下)少ない医師でも効果あり 地域にあった病院運営
地域医療を守るために、医師不足の状況を打破しようという動きが全国各地の自治体で始まっている。福島県でも独自の方策で医師を確保しようとする自治体が出てきた。東北ではすでに地域の特性に合わせた病院運営、医師の配置に取り組み、成果を出しつつある病院もある。地域医療の崩壊を食い止める方法はあるのだろうか。(小野田雄一)
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「約60kmの海岸線。9つの海水浴場。15のゴルフ場。豊かな海の幸。一年中サーフィンができるまち“いわき”」
観光客向けパンフレットのキャッチコピーではない。実は医師と医学生を対象に行う就職ガイダンスの案内文書の一節だ。
福島県いわき市と同市の民間病院は9〜10月にかけ、いわき市と東京、福岡県北九州市の3カ所で医師採用に向けた就職ガイダンスを行う。櫛田一男市長も参加しトップセールスを行う。自治体と民間が協力し県外で医師の募集活動を行うのは極めて異例だ。
厚生労働省の調査によると、いわき市の勤務医数は平成18年度が公立、民間合わせて323人で、12年度の379人より15%減った。開業医を含めた市内の医師数も、人口10万人当たり167・9人で、全国平均の206・3人より2割近く少なく、公立、民間とも医師不足が深刻化している。
「これまで医師の確保は県が中心になってきたが、それだけに頼っていられなくなった。県や国も医師確保対策を打ち出しているが、効果が出るのは将来の話。とにかく今できることをやっていくということ」と同市地域医療対策室はいう。17日時点で、県内外から10人の参加希望が寄せられているという。
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一方、公立病院でありながら10年以上黒字を続け、医師離れも生じていない例がある。人口1万人に満たない岩手県藤沢町の町民病院(病床数54)だ。町の「価値ある長寿社会」との方針に合わせ、高齢者医療に重点を置いた病院運営を行っている。
町民病院を中心に、特別養護老人ホーム、デイサービスセンター、グループホーム、訪問看護ステーションなど各施設を設置。ケアの各段階ごとの情報を町民病院を中心とするシステムの中で統合し、高齢者のケアを行っていく仕組みだ。
同病院の設立(平成5年)から参加した佐藤元美院長(53)は「ビジネス用語で“垂直統合”と呼ばれる方式。これにより、少ない医師でも患者のケアに最大限の効果を発揮することができる」という。
現在、同病院には5人の常勤医がいる。病院と地域との繋がりを深めるため、全医師が訪問診療を行っている。佐藤院長自らも住民説明会を開き、病院運営の見通しや、“医師も人間である”ことを住民に理解してもらっている。また医師用の住宅の整備も進めた。
こうした努力の結果が、高待遇をうたうわけでもないのに、大学病院からの引き揚げ要請を断り町民病院に残ったり、県外出身ながら着任を志望する医師の心をつかんだようだ。
「医師が離れないのは、仕事しやすい環境作りの成果だと思う。医療制度上の問題や一部に対応の難しい患者がいるのも、他の病院と同じ。でもそれはわれわれが解決できる問題ではない。藤沢の医療のために、やれることをやっていくだけ」。佐藤院長は力強くそう話した。
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地域医療、医療行政に詳しい伊関友伸・城西大学准教授は、東北の公的医療について、「全国で一番医師不足に苦しんでいる地域。自治体病院は、これまで大学病院の派遣医師に頼り、自らの努力で医師を招聘(しょうへい)する努力を怠ってきた。待遇も民間病院に比べて悪く、医師にとって魅力がない病院になっている」と分析する。 医療崩壊を防ぐためには「待遇を民間並みにするのが重要」という。ただ地方自治体の財政が厳しい状況では困難だ。そこで、「医師がやりがいを感じる職場づくり」を挙げる。そのよい例が医療と行政が一体となった藤沢町の試みだという。
伊関准教授は「地方の公的医療は、“あれもこれも”ではなく、その地域でどんな医療が必要なのかを考え、それにふさわしい規模で運営するのが望ましい」と指摘している。