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【特報 追う】一本桜岩手山と競演 絶景かな 小岩井農場の新たなスポット

2008.4.15 02:41

 桜前線が北上し、北国にもお花見シーズンがやってきた。岩手県でも盛岡市の石割桜や北上市の展勝地など桜の名所は多いが、最近とみに注目を浴び出した桜がある。岩手山(2038メートル)の南麓に広がる雫石町の小岩井農場の一本桜だ。(土樋靖人)

 10年ほど前の春、里帰り中、実家の近くにある小岩井農場へ妻子を連れて遊びに行った。その帰り道、道路わきでカメラを抱えた人たちを見つけた。何を撮っているのだろうと思い、車を降りたら、牧草地に1本の桜がポツンと立っていた。後ろに残雪をいただく岩手山がそびえ、青空に雲が浮かんでいた。早速、荷台からカメラを取り出し、数コマ撮影。その1コマを大きく引き延ばして額に入れ、しばらく自宅アパートに飾った。一本桜がまだ派手に知られていないころの話だ。

 それが、昨年のゴールデンウイークには、小岩井農場を訪れた観光客の3分の1が一本桜を見に来たという。NHKの朝の連続ドラマ『どんど晴れ』に登場したからだ。

 小岩井農場ができる前、あたりは不毛の原野だった。農場では防風、防雪のため、アカマツやカラマツなどの木々を植えた。その後、本格的な植林を開始。その面積は農場の3分の2に上る。

 宮沢賢治の童話に『狼森(オイノもり)と笊森(ざるもり)、盗森(ぬすともり)』というのがある。童話に出てくる森はもともと、小岩井農場の北部にあったが、童話はその名前の由来を創作したような物語だ。狼森は一本桜から北東へ約1キロのところにある。賢治は大正11(1922)年に小岩井農場を訪れている。賢治も一本桜を見たのだろうか。

 というわけで、一本桜も、暑さが苦手な牛のため、日陰を作る目的で、カシワなどの木とともに植えられた。樹種はエドヒガンザクラ。巷では、樹齢 200年とか 300年という話も出回っているらしいが、本当のところは約 100年。

 昔は馬を引いて牧草刈りをしていたが、昭和30年代からトラクターが導入されると、牧草地の木が作業の支障となり、切られてしまった。一本桜だけが「きれいだから」という理由で残されたらしい。

 それでも、農場の従業員もあまり知らなかった。一本桜の存在が知られるようになったのは昭和50年ごろ、すぐ南側に広域農道が開通してからだ。

 5、6年前までは多いときで20台ぐらいの車が路上駐車。カメラの放列が並んだという。いまでは、道路をはさんで向かい側に駐車場も整備されている。

 昨年、一本桜の大敵として、野鳥のウソの存在が浮上した。花芽を食べられ、花はまばらだった。実は以前から5年に2回ほど、被害が目立っていたが、昨年は『どんど晴れ』が放映されただけに、大勢の観光客をがっかりさせた(花が咲いた一本桜の映像は一昨年に撮られていた)。

 農場はこの新たな観光スポットを守ろうと、樹の健康診断や土壌改良を行い、枝に鳥よけのリボンや磁石を付けた。「木の下に落ちた花芽の数は、昨年より少ないと聞いている」と経営開発室の斎和則さん。今年は満開の一本桜を楽しめるかな?

 農場では観光客に、牧草地に入らないよう呼びかけている。『どんど晴れ』の撮影でも、桜の季節には畑に入れなかった。畑に入っての撮影は秋、草の収穫を終えた後と、真冬の2月だった。それだけ、畑を大切にしている。「春は空気が乾燥しているので、たばこの不始末による山火事が怖い」(経営開発室の大西智子さん)とも。

 写真雑誌のコンテストで、一本桜を見上げるような形で撮った写真を見たことがある。牧草地に入らなければ撮れない構図だった。ルール違反をして撮った写真だとしたら芸術作品といえるだろうか。自制が求められている。

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【用語解説】小岩井農場

 明治24(1891)年開設。共同創始者の小野義真(日本鉄道会社副社長)、岩崎彌之助(三菱社長)、井上勝(鉄道庁長官)の頭文字をとって名付けられた。盛岡市の北西12キロに位置し、総面積は約3000ヘクタールで、その3分の2が山林、約 700ヘクタールが耕作地。中央部の約40ヘクタールが「まきば園」として観光客に開放されている。酪農を軸に、山林、種鶏、環境緑化、農場商品販売などの事業を展開している。

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【用語解説】雫石さくらめぐりツアー

 小岩井農場一本桜や樹齢約 800年の弘法桜など、雫石町内にあるサクラの名所をバスで回るツアー。実施日は4月25日〜5月10日。料金(税込み)は大人2500円、子供1000円。定員は毎回80人。申し込みは銀河交通(電) 019・ 625・2150。締め切りは出発日の7日前。

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