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【発信−みちのくから(3)】平泉町世界遺産推進室長補佐、八重樫忠郎さん(46)

2008.1.6 02:52

 「絶対に登録されると信じている。全力で努力してきた」

 今夏、国内では15件目となる世界遺産登録を目指す岩手県平泉町を中心とした「平泉−浄土思想を基調とした文化的景観(平泉の文化遺産)」。

 平成12年11月、奈良、和歌山、三重県にまたがる「紀伊山地の霊場と参詣道」(熊野古道)、島根県の「石見銀山遺跡」とともに暫定リストに登載が決定して以来、平泉町の担当者の中心となって、本登録に向けた取り組みを推進してきた。

 正念場となった昨年8月末の国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関・国際記念物遺跡会議(イコモス)による現地調査では、県教委や関係する一関、奥州両市の担当者とともにスリランカからきた調査員に同行。「平泉の文化遺産」を構成する同町内の建造物、史跡などの資産全体については、1人で説明にあたった。

 「石見銀山遺跡は最終的に世界遺産委員会で満場一致で登録が決まったが、一時はイコモスが登録延期を勧告するなどトラブルになった。前年の現地調査で、調査員が遺産の価値を理解できなかったのが一因と考えられていたので、いかに効率よく説明するかに腐心した。CGや写真を使うなど工夫して分かりやすく説明したので、平泉を訪れた調査員は好印象を持ってくれたと思っている」と自信をのぞかせた。

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 同じ暫定リスト組の熊野古道が16年、石見銀山遺跡は19年に一足早く世界遺産に登録されたのに対し、平泉が遅れている理由については、「平泉の文化遺産には一関、奥州両市の遺跡資産も含まれており、住民全体に理解してもらい、コンセンサスを得る必要があるため、時間がかかった」。

 続けて「世界遺産は現在、世界各地で851件が登録されており、ユネスコなどで登録件数を抑制する動きがある。かつては姫路城(兵庫県)や京都、奈良の寺社・仏閣といったようにその地域を代表する『単品』だけで登録されてきたが、年々登録条件は変化して、審査も厳しくなってきている。平泉の場合は審査対象が都市空間といえると思うし、登録名称を『都市平泉』とつけたかった。もし登録されれば、国内では初めてとなる」と解説する。

 また、「平泉の文化的価値をいかに伝えるかが重要」と現地調査員から指摘された課題については、「観光客などに分かりやすく説明することはもちろんだが、地域住民が継続して価値を理解し、後世に伝えていくことが大事」と力説する。

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 世界遺産に関わる前は、文化財調査員として長年にわたり町内に数多く残る遺跡の発掘調査に携わってきた。

 奥州藤原氏3代・秀衡の政庁「平泉の館」跡とされる柳之御所遺跡もその一つで、暫定リスト登載のきっかけとなった。それだけに「世界遺産登録推進業務を担当できて本人が一番びっくりしている」と苦笑する。

 本登録が決まった場合は、記念イベントなどこれまで以上に多くの仕事が待ち受ける。「登録後は現在の景観をよりよいものにして未来に残す必要がある。建物を建て替えるにしても、植栽などで景観に配慮した工夫が求められる。国土交通省が柳之御所遺跡を避けるようにして造った国道4号バイパスは、車の通行が同遺跡から直接見えないように配慮するなど、世界遺産の登録推進には多くの人の協力、総合力があった。県や2市ともさらに連携を深めて本登録につなげていきたい」

 「平泉の文化遺産」の登録可否を決めるユネスコの世界遺産委員会は7月にも、カナダ・ケベック州で開かれ、県や県教委、3市町の関係者が現地入りする予定だが、「こちらでみんなで喜びを分かち合い、爆発させたい」としてカナダに向かうつもりはないという。(石川裕司)

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 やえがし・ただお 昭和36年、岩手県北上市生まれ。同60年、駒沢大学文学部歴史学科卒業後、平泉町役場入り。町教委文化財センター文化財調査員(発掘調査専門職)として、町内の中尊寺、毛越寺、柳之御所遺跡、無量光院跡などの発掘調査に従事。柳之御所遺跡付近は63年に国道4号バイパスの建設が計画されたが、発掘調査によって保存運動が起き、国土交通省が迂回ルートを決定するなど今日の世界遺産登録推進につながった。

 世界遺産暫定リスト登載時(平成13年4月)から、世界遺産推進室室長補佐として、「平泉の文化遺産」推薦書の作成などに携わってきた。

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