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【特報 追う】東北の空港(中)「地の利」に負けた福島
■JAL撤退へ「身の丈に合う整備を」
「来年1月末で福島空港から全面撤退する」−。7月4日、日本航空の関係者が福島県庁を訪れ、県観光交流局長らに、その方針を伝えた。県は日本航空が福島空港につながるすべての路線を廃止する方針を決めたことを、この席で初めて聞いた。まさに“寝耳に水”の話だった。
日本航空の説明は「燃油高騰などに伴う経営戦略の一環」というもの。「燃油高騰は分かっていたが、そこまでやってくるとは認識していなかった」。県空港交流課はそう振り返る。
県は航空路線の立て直しを図ろうと、9月、福島−伊丹線を運航している全日空と、同社と業務提携するアイベックスエアラインズ両本社を訪問した。伊丹線の増便や沖縄線の新設などを求めるためだ。
だが両社とも、幹部が「検討する」と答えるにとどまり、慎重な姿勢を崩さなかった。
県の中央部を新幹線と高速道路が南北に貫き、主要都市に向けた高速バスも多数ある。仙台や東京までのアクセスは1時間余りと極めていい。東北でもっとも地の利に恵まれている福島県だからこそ、空港需要を高めるには厳しい条件がそろう。「そもそも福島に空港が必要だったのか」。こう揶揄(やゆ)する他県の空港関係者もいる。
福島空港の開港は、バブル景気が崩壊し、不況の波が続々と押し寄せていた平成5年。実は開港までも苦難の連続だった。
「福島県にとって福島空港は20世紀最大のプロジェクトだった」と話すのは、地元紙福島民報の元幹部で、現在は福島学院大学監事の河田亨さん(77)。同紙面で積極的に「空港必要論」を展開し、当時の知事や県幹部に対しても空港建設の必要性を訴えていったという。
「福島県は昭和30年代の『1県1空港』という流れに乗ることができなかった。新幹線を優先させてきた時代もあった。でも、空港がない地域は廃れる。県の役人たちは予算をつけようとしないから、われわれが動いた。いわば民間が作った空港だ」
空港の是非が語られていた当時、同社内でも「福島に空港はいらない」という声があったという。「会長には『空港を作ってどこへ飛ぶんだ』といわれた。大阪や九州…と言うと、今度は『このなかで今年大阪に行った者は手を挙げろ』と。その時手を挙げたのは1人だけでね…」。当時から空港不要論は渦巻いていたと河田さんは明かす。
だが、それでも必要だと訴え続けた。「福島空港ができたからこそ、立地してきた企業もたくさんある。もし福島空港がなければ、日本の空の地図から福島は存在しなくなる。考えなければならないのは、空港をいかに育てていくかということじゃないのか」
一方で、現状の空港行政について苦言も呈する。「空港関係施設は天下ってきた役人ばかり。本当に空港のことを考えているのか。今の連中には危機感がない。“持続可能”な発展が見込める態勢を作っていくことが必要だ」
もっとも、今回の日本航空の福島空港撤退を「それほど悲観する話ではない」とする声もある。
福島空港のメーン路線の一つである伊丹線を例にとると、全日空と日本航空は運行ダイヤが重なっている便が多かった。日本航空を利用していた乗客が、残った全日空系を利用するように促していけば、搭乗率が上昇し、県が期待するような効率のいいダイヤ編成や便数増加の可能性があるというのだ。
航空会社の関係者は「今の福島空港をとりまく環境を考えれば、そうそう乗客が増える可能性は低い。あれこれ欲しがらず、“身の丈”にあった空港整備を考えるべきではないか」と指摘する。
福島空港発着便のうち日本航空の利用者数は約4割(昨年度)だ。この4割を、残る全日空系の便でどれだけカバーできるかが、今後の空港発展を考える上で大きなポイントになってくるとみられる。
一方、県空港交流課は「なにが身の丈なのかは分からないが、今まで路線として就航していた実績がある」と強調する。札幌や大阪、沖縄など廃止された路線の復活や、就航旅客機の大型化などを求めていく方針にかわりないという。
平成22年にはすぐ隣の茨城県に新空港が開港する予定だ。航空各社はそこにどんな路線を開設し、運行ダイヤはどうなるのか。これまで福島空港の利用圏であった茨城や栃木の人たちは、どちらの空港を利用することになるのか。福島空港を取り巻く環境は、確実に変化している。(豊吉広英)