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町有林の「スギ」で新居建築支援 福島・小野町
“団塊の世代”を中心に「田舎暮らし」への関心が高まっている。東北各県、市町村の多くが地域の特色を生かした移住・定住支援策を打ち出し、受け入れに積極的だ。人口減少が続く福島県小野町は、町有林を新居建築用として贈るユニークな取り組みが実を結び、7月、新町民が相次いで誕生した。同町に移住を決めた家族の話などから田舎暮らしの「今」を探った。(嶺岸善彦)
「町が大切に育ててきたスギを8トントラック1台分、プレゼントします」
福島県東部、阿武隈山系中部に位置し、中心部の標高が約400メートルの小野町。町に豊富に生い茂るスギを、移住者に贈る「町有林おすそわけ事業」を打ち出した。
その適用第1号となったのは静岡県浜松市の森部文雄さん(59)。秋田犬を複数頭飼育している関係で何度も東北各地を訪れているうちに同事業を知り、申し込んだ。「アクセスがいいし、好きな海も近い。浜松は外国人犯罪が増えているが、小野は町も人も穏やか」と森部さんはいう。
もう一つの決め手は「地盤」だ。小野町周辺の阿武隈地域は地盤が強固で活断層も少ないとの調査結果があり、首都機能移転候補地にもなっている。「浜松は東海地震の心配があるが、小野は地震に強そう」。
プレゼントのために町有林から切り出されたスギは30数本。町内の「建築なか村」が森部さん宅を建てる。中村重夫代表(54)は「町で育ったスギを使ってくれるのだからうれしい。スギは(伸縮など)狂いが少ない」と胸を張る。
秋ごろには100平方メートルほどの平屋の新居を完成させる計画で、打ち合わせを通じて森部さんとは交流も深まっている。
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小野町の人口は昭和30年の1万7620人をピークに減少を続け、6月30日現在、1万1978人。町は「このままでは1万人を割り込む」と危機感を強め、昨年10月から定住推進事業に乗り出した。「町有林おすそわけ」以外にも、住宅を購入した移住者に商品券10万円分を贈る「ようこそ小野町定住祝金交付」など5事業を設定、首都圏などへの情報発信に力を入れている。
東京都足立区の鈴木武男さん(66)、尚子さん(64)夫妻は同町の2階建て中古住宅を5月に購入し、「祝金」の交付第2号となった。
夫妻は平成9年から、東京と福島県金山町で「二地域居住」を実践してきた。金山町ではカスミソウの栽培に打ち込んだ。
約10年間親しんだ金山町を離れ、小野町に本格的に移住する理由の一つは「雪」。夫妻は「雪道の運転は年齢的につらくなってくる。小野町も冬は寒いが雪は会津(金山町など)ほど降らない。(磐越道小野)インターがあって交通も便利」と口をそろえる。
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早くからアイデアあふれる“誘致活動”に取り組んでいる自治体がある。仮想農村「達者村」を16年10月に開村し話題となった青森県南部町だ。グリーンツーリズムを柱とした都市住民との交流を続けている。
同町農村交流推進課は「定住してもらうには、まず町と人を知ってもらう必要がある。まだ定住には至ってないが、交流事業は地道でも、きっと成果は現れる」と力が入る。
田舎暮らしを支援しているNPO(民間非営利団体)「ふるさと回帰支援センター」(東京・銀座)の担当者は「東北南部の福島県は、移住先、二地域居住地として、地理的に注目を集めやすい」という。その上で「受け入れ側が、町のいい面をPRするだけでなく、マイナスの部分も隠さず伝えなければ、移住後のミスマッチが起こりうる」と指摘する。
積極的なPRだけでなく、十分な事前交流、受け入れ側の「情報公開」も、定住人口アップのカギを握っているといえそうだ。
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■「田舎暮らし」アンケート 国土交通省は「田舎暮らし」の実態を把握しようと、3万人を対象にしたアンケートを初めて実施、5月に結果を公表した。「移住・定住」実践者は2・0%、「二地域居住」実践者は2・4%いた。まだ実践していない人でも、男性、特に40代から50代後半の人で意欲が高く、今後5年以内に両者で計9・2%、10年以内に計13・0%に実践者が増えると見込まれている。