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特区を検証 喜多方市 小学校農業教育 学んだ生命の大切さ

2008.4.24 03:40

 福島県の北西部、会津盆地の北部に位置する喜多方市は、「蔵」と「ラーメン」の街として知られている。しかし、基幹産業は、あくまで豊かな自然と良質な地下水を生かした農業だ。その喜多方市の小学校で昨年春、全国で初めて「農業科」が導入され、農業を生かした心の教育が始まった。

 これまでも総合的学習に農業体験を取り入れた学校は数多くあったが、部分的な農業体験にとどまっていた。農業科では、畑の土作りから田植え、除草、害虫駆除、収穫、そして食べるまで年間を通じて体系的に農業の全課程に取り組む。

 「作物を育てることを通して生命と環境を学ぶことは、子供にとって大きな財産になる」

 「農業科」を導入した市立熱塩小の五十嵐雄一校長は狙いをこう話す。授業時間は3−6年生を対象に年45時間、総合的な学習の時間を移して確保した。

 不登校の増加や規範意識の低下など児童を取り巻く環境が悪化する中で、喜多方市は、「じっくり農業に取り組むことで子供たちに豊かな心をはぐくんでもらいたい」(市教育委員会)と農業の持つ教育的効果に着目。教育課程を弾力化して農業課で、いのちや共生、思いやりなどを学ぶ「小学校農業教育特区」が平成18年11月、認定され、昨年度から熱塩小など3小学校で農業科が導入された。

 初年度は、農業に詳しい教諭もいなければテキストもない。地元農家などから派遣される支援員や農業高校生らの指導を受けながら「手探り」だった。

   ■   ■

 熱塩小の支援員となった元農協営農指導員の小林芳正さん(74)は、子供たちにまず、「コメは誰がつくるの」と質問した。「農家の人」「おじいちゃんやおばあちゃん」と予想通りの答えが返ってきたが、「コメは人間じゃなくて稲が作るんだよ」と語りかけた。「コメはコメ自身の力で実るもので、人間はそれを手助けするのだと知ってほしかった」

 近くの農家から借りた田700平方メートルで稲、畑1300平方メートルでジャガイモやダイコン、カブなどを育てた。無農薬のため病気や害虫の心配があったが、「作物の生命力を信じようと声をかけた」(五十嵐校長)。子供たちは作物に付くアブラムシが、木搾酢と牛乳を混ぜた液体で駆除できることも学んだ。果たせるかな、農作物は順調に育った。ある6年生の女子児童は、その様子を作文に書いた。

 「小さくてひょろひょろしていたニンジンが、大きくたくましく成長したのです。少しの手助けで、1人でグングン育っていくのです。ニンジンは引っ張っても負けないで、ぎゅっと土にしがみついていました」

 女子児童は生命力のたくましさを実感した。

   ■   ■

 失敗もある。多くの稲がいもち病にかかってしまったのだ。子供たちは農業を通して自然のすばらしさと厳しさを学んだ。

 ただ授業中の子供たちの笑顔が、小林さんを時に不安にさせることもあった。

 「命についてみんな考えているのだろうか」

 しかし、11月に開かれた農業科を実施した3校のシンポジウムで、意見や感想を発表する子供たちを見て涙がこぼれた。「コメは稲が作るという意味を理解したようだった」からだ。

 農業科を「教育効果あり」とみる喜多方市は20年度、実施校を9校と3倍増し、独自の副読本も作製した。将来的には市内全20小学校で導入する。(嶺岸善彦)

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