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【酒屋万流】(1)兄弟で醸す“純米の味”

2008.5.8 03:44

 “酒屋万流”。古今東西、酒蔵は独自のやり方で理想の酒造りを追求してきた−。はずだが、日本酒離れに歯止めがかからない。焼酎や第3のビールなどの人気に押され、消費量はピークの半分以下にまで落ち込んだ。日本酒の復権には何が必要なのか。こだわりの酒を醸し、支持を広げる蔵元たちを訪ねた。 (山口圭介)

 青森県弘前市、桜で名高い弘前城近くに兄弟で、人気の純米酒を造る三浦酒造はある。花見の季節、酒造りはほぼ終わっていたが、蔵からはフルーツのような新鮮な香りが漂ってきた。

 「うちの純米酒の香りかな?『豊盃(ほうはい)』というんですが、濃醇で味にふくらみのある酒ですよ」。そういいながら蔵元の三浦文仁さん(31)は出迎えてくれた。

 純米酒は、米と水だけで造った酒のことだ。かつて日本酒とは純米酒のことを指していた。ところが、原料となる米が不足した戦中戦後の一時期、苦肉の策として、サトウキビなどから生成した「醸造アルコール」の添加(通称・アル添)が行われるようになり、それが戦後そのまま定着してしまった。

 今、全国の日本酒生産量のうち、純米酒の割合は1割台に過ぎないとされる。

 「品質調整のためにアル添した吟醸酒などは香り高くて実際においしい。アル添を否定はしないが、緊急避難的に始まった策がここまで普及してしまった現状は、おかしいのかもしれない」と文仁さんはいう。

 アル添された清酒は手ごろな価格の酒として全国で飲まれているが、その特有のアルコール臭などが日本酒嫌いを増やしているとの批判もある。

 そんな中、日本酒本来の姿である純米酒にこだわり、消費者の支持を集める蔵が増えてきた。三浦酒造もその1つだ。

 ただ三浦酒造が最初から純米酒を志向していたわけではなかった。酒造りを統括する杜氏(とうじ)が、考え方の違いから蔵を去ったことがきっかけだった。

 「一か八か自分たちでやってみるか」。4代目の父、慧さん(67)のもと、平成12年、別の酒蔵で修業した文仁さんと、広島の醸造試験場にいた兄の剛史さん(36)らによる試行錯誤の酒造りが始まった。

 「あんな若造に酒造りなんてできっこない」。県内で杜氏なしの酒造りは前例がなく、周囲からは陰口が聞こえてきた。まさしく、当初は失敗の連続。腐造する一歩手前の酒を造ってしまったこともあった。

 ただ「お客さんの求める酒は何か」を探求して、酒質の向上に努めた。わずか400石(1石=180リットル)の小さな蔵ながら、精米機も自前で備え、年ごとに異なる米の特徴を生かしながら、酒造りに反映させた。

 そして行き着いたのが純米酒だった。「純米酒は米の特性が一番よく現れる、ごまかしのきかない酒」と文仁さん。「この8年で酒臭い酒が減って、後味がすっきりした、キレ味のある酒ができるようになった」と確かな手応えを感じている。今では三浦酒造の酒の約7割が純米酒だ。

 17年からは全国新酒鑑評会で2年連続金賞を受賞した。

 いつしか、津軽の片田舎の酒蔵に全国から注文が殺到するようになった。特にフルーティーな純米酒が若い人から圧倒的な支持を集め、新たな日本酒ファンを開拓した。

 人気が出ても、むやみに生産量は増やさなかった。「酒造りを完全にマニュアル化することはできない。手作業だからできる酒を造っていきたい」との考えからだ。

 文仁さんは「どうして売れたかなんて分からない。自分たちがやってきたのは、酒造りの当たり前の仕事」。消費者の声に耳を傾けながら、手間やコストを惜しまなかった。

 「さくらまつり」でにぎわうゴールデンウイークの弘前城で、三浦兄弟は看板商品の「豊盃」を自ら売った。

 「手売りが好きなんです。お客さんの反応がダイレクトに返ってくるから」

                   ◇

【用語解説】日本酒(清酒)の課税数量

 国税庁によると、日本酒の課税数量は、ピーク時の昭和48年度には約176万キロリットルあったが、それ以降は減少を続け、平成18年度は約70万キロリットル。15年度には焼酎に抜かれた。一方、純米酒(純米吟醸除く)は、昭和60年に約2万キロリットルだったが、地酒ブームなどで順調に伸び、18年は約5・8万キロリットルまで増えた。

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