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【大森山の仲間たち】(下)アムールトラ繁殖成功

2008.5.14 03:29

 大森山動物園の猛獣舎前。木箱で覆われた小さなテレビ台が設置されている。画面をよく見ると、しま模様が入った小さな動物が体を丸め、折り重なるようにして母親と一緒に昼寝をしている。絶滅が危惧(きぐ)されているアムールトラのアシリ(8歳)と、3月6日に生まれた雌の子供2頭だ。

 すぐ隣の運動場では、人の太腿ほどもある大きな前足を持った父親のウィッキー(8歳)がゆっくりと歩きまわり、天井から鎖で吊り下げられた骨にかぶりついている。その迫力に、ガラス越しに見ていた小さな女の子が思わず「わーっ、怖い」といって泣き出した。

 同園には以前、アムールトラよりもひと回り小さいベンガルトラ2頭(雄と雌)がいた。だが国内で飼育されているベンガルトラはほとんどが雑種で、血統登録されていない。猛獣舎のスペースにも限りがあることから、同園は数年前、「ベンガルトラの繁殖は行わず、希少性の高いアムールトラを繁殖させる」(小松守園長)ことにした。

 ベンガルトラの雄が死亡し、平成17年3月、静岡県の富士自然動物公園からウィッキーを迎え入れた。続いてベンガルトラの雌が亡くなり、19年6月に東京都の多摩動物公園からアシリを借りてきて、ペアリングの時期を待った。

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 アムールトラは、最初の顔合わせでけんかすると、互いに致命的な傷を負うことがある。このため「ペアリングは慎重に行った」と飼育担当の宇佐美均さん(42)は振り返る。

 アシリが来て2カ月後の同年8月上旬、柵越しに初めてウィッキーと見合い。そして10月24日に2頭を同居させた。宇佐美さんらの心配をよそに、これといったトラブルはなく、すぐに交尾が確認できた。

 宇佐美さんは「互いの相性が良かったのが幸いした。見合い期間をたっぷりとったことも功を奏した」という。

 それだけではない。ペアリングのタイミングもきちんと狙ってのことだった。

 トラは月に1度、1週間ほど発情する。宇佐美さんらは同居させる前の9月下旬に発情を確認、次の発情を10月19日に確かめた上でペアリングさせた。このときは妊娠には至らなかったが、12月には発情しなくなり、妊娠を確信した。

 すぐに木製の産箱を設置、天井にカメラを付け、24時間態勢でアシリの出産を見守った。最終交尾から105日目の3月6日夕、アシリが餌を食べず、産箱の中で何度も寝返りを打ち始めた。午後6時半すぎ、第1子を出産。約2時間後に第2子を産んだ。2頭ともすぐにアシリのおっぱいに吸い付いた。「肩の荷が下りてほっとしたと」と宇佐美さん。

 実はアシリは、多摩動物公園時代に3回の出産経験があるベテランお母さんトラ。アシリを信じて、刺激を与えないように、しばらく子供の世話を任せきりにした。するとアシリは子供のお尻をなめてウンチを出させてそれを食べたり、毛繕いしたりしたという。「自然界では出産の形跡を残すと外敵に襲われるため、本能的に巣をきれいにするんです」。飼育担当らの心配は杞憂(きゆう)に終わった。

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 3月21日に子供の初めての身体検査を行ったところ、体重は3・3キロだった。2頭とも順調に成長しており、5月5日には8キロになった。最近は歩きもしっかりし、肉も食べる。飼育担当らが近づくと、後ずさりしながら「ウーッ」とうなって威嚇するようにもなったという。

 「産後しばらくは、ちゃんと生きているかと心配で、毎朝出勤するたびにモニターを見ていた」という宇佐美さん。だが、今では初の繁殖成功に自信を深めつつある。

 同園は今月下旬から、ずっと室内にいたアシリらを外に出す訓練を行う予定だ。ただ、トラはライオンと違って群れを作らないため、ウィッキーとの親子4頭でのだんらん姿は見ることはできないという。(木村庄一)

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【用語解説】アムールトラ

 朝鮮半島からロシアにかけて生息する。シベリアトラなどとも呼ばれ、ネコ科の中では最大。他の亜種に比べて全身の毛が長く、厚いのが特徴だ。夜行性で単独で行動。ヘラジカやイノシシなどを捕食する。生息数は500頭以下とされ、国内の動物園には現在、50数頭しかいない。

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