ニュース:地方 RSS feed
【特報 追う】比内地鶏、再びピンチ 鳥インフルでブランド認証進まず
秋田県小坂町の十和田湖畔で見つかったハクチョウの死骸(しがい)から毒性の強い高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)が検出された。県は4月30日、危機管理連絡部を設置し養鶏農家への立ち入り調査を実施したが、新たな感染は報告されていない。県北地域は県の特産品、比内地鶏の産地。昨秋の食品偽装事件で傷ついた地域ブランドは再び窮地に追い込まれている。(宮原啓彰)
比内地鶏の公的なブランド認証制度の受付を4月21日から始めたばかりの秋田県。比内地鶏の食品偽装を行った「比内鶏」社の元社長の藤原誠一容疑者(77)ら幹部6人が、1日に詐欺容疑などで逮捕され「一区切りになるはずだった」(県関係者)。
ところが、その矢先の鳥インフルエンザ検出。県は、各養鶏農家の現地検査を経て、今月中に本年度分の認証票を一斉交付する予定だったが、鳥インフルエンザ予防のため現地検査ができない状況に陥ってしまった。
県農畜産振興課は「状況次第では月内交付ができない可能性もある。偽装事件と違い、誰が悪いという問題ではないが、新認証制度で再出発しようという時に残念だ」とため息をつく。
県は保健所などに相談窓口を設け、4月30日には危機管理連絡部を立ち上げ対応に追われている。これまでに、死骸の発見場所から半径30キロ以内にある小坂町と鹿角市の養鶏農家全戸への立ち入り調査を実施、その他の養鶏農家には聞き取り調査を実施したが、異常はなかった。
一方、地元の農協や自治体も必死だ。鹿角市のJAかづのは「今のところ出荷停止には至っていないが、感染はもちろん風評被害が不安」と話す。
同農協は、比内地鶏の生産者に対し、鶏の放し飼いの禁止▽鶏舎の補修と補強の徹底▽生産者と部外者および同業者間の接触を極力避ける−ことなどを通達した。
昨年10月、比内地鶏を鳥インフルエンザから守ろうと「予防対策会議」を開いていた大館市。市内を貫く長木川はハクチョウの飛来地として知られ、市民らが長く餌付けを行ってきたが、今冬からは餌やりを禁止していた。
同市は対策会議で策定した鳥インフルエンザ予防計画にのっとり、4月28日に緊急対策会議を開催。これをふまえ、事実経過と対応を記した文書を市内全戸に配布した。
「とうとう対岸の火事ではなくなった。準備のおかげで迅速に対応できたことが不幸中の幸い。もちろん何も起きない方が良かったが」と同市担当者は疲れた声で話した。
観光面にも影響が出ている。小坂町産業課は「今シーズンは、スタートダッシュでつまずいてしまった」と肩を落とす。
冬季、深い雪に閉ざされる十和田湖周辺は、新緑の萌(も)えるGWが観光シーズンの幕開けになる。
同町の湖畔周辺の20軒のホテルや旅館の期間中(4月29日〜5月6日)の宿泊予約は約6000件。ところが、このうち、先月30日時点で30件ほどのキャンセルがあったという。「中には『鳥インフルエンザが心配』との理由もあった」と同課。キャンセルの大半が個人客で、同課は「今のところ、影響は大きくないが、個人客が多い小規模な宿泊施設にとっては苦しい状態。予約客から『鳥インフルエンザは大丈夫か』という問い合わせも少なくない。安全性を訴えたい」と話した。
環境省は1日、北海道別海町で回収されたハクチョウの死骸を簡易検査したところ、鳥インフルエンザウイルス(A型)の陽性反応が出たと発表。同日から、秋田と北海道、青森と合同でガンカモの渡来地の調査を始めている。渡り鳥が秋田に運んだ問題は、徐々に拡大の様相を見せ始めている。
◇
■鳥インフルエンザ 症状の軽い「低病原性」と、症状の重い「高病原性」に分かれ、問題化しているのは後者。国内では16年2月に京都府の養鶏場で鳥インフルエンザ感染による大量死があるなど、西日本で散発的に発生してきた。十和田湖での確認は、北日本で初めてのケース。
高病原性ウイルスのうちH5N1亜型は、鳥から鳥だけでなく、発症した鳥と濃厚な接触のあった人にも感染する例が国外で報告されている。平成15〜16年に、中国や韓国、東南アジアで流行し、インドネシアでは105人(3月18日現在)が死亡している。鳥から家畜、人間への感染例が徐々に増えつつあり、人から人へ感染する新型ウイルスに突然変異するのではないかと世界各国が警戒している。