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【特報 追う】想定外だった「落とし穴」 比内地鶏偽装
秋田県大館市の食肉加工製造会社「比内鶏(ひないどり)」による比内地鶏製品の偽装発覚から2週間余り。県は地産ブランドの信頼回復に躍起だが、県内外の菓子製造業者らによる偽装商品も次々と発覚し、後手に回った感は否めない。瞬く間に地に落ちたブランドに、お歳暮商戦を目前に控えた百貨店らからは恨み節も聞こえてくる。(宮原啓彰)
「比内鶏」社による商品偽装の影響は比内地鶏を扱う県内の業者にとどまらなかった。比内地鶏の7割以上が首都圏を中心とした県外に出荷。小売店のダメージは県外で、より顕著だった。
都内の大手百貨店で同社の製品を取り扱っていたのは12店舗。うち同社の製品のみを販売していた4店舗からは、お歳暮商戦を前に、比内地鶏が店頭から消えてしまった。ある店舗は他社の製品に「本物」を示す確認書を掲示したが「イメージ低下は避けられない」という。
秋田県の対策本部は「偽装商品を載せたギフトカタログを既に作成していた百貨店もあり、苦慮している。具体的な保証は未定」と頭を抱える。
偽装問題は県外の関連商品にも飛び火した。秋田市の卸売会社に「比内地鶏卵ケーキ」など菓子製品を納入する栃木県の菓子製造会社「三宝製菓」が、比内地鶏の卵と偽り栃木産の鶏卵を使用していたことが発覚。同社は仕入れの証明書まで偽造していたという。
このほか、仙台市の食品卸業者や秋田県の土産物卸業者2社も土産物用の商品名に「比内鶏」「比内地鶏」の表示を使っていたなどとして自主回収を始めた。
「比内鶏」社だけが諸悪の根源とは、すでに言えない状況だ。
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北海道の食肉加工販売会社「ミートホープ」による食肉偽装問題、名古屋コーチンの偽装問題など他県で続出する食品偽装は、警鐘とならなかったのか。
「他県での食品偽装で比内地鶏ブランドを疑ったことはない。業者を信頼して、すべきをしてきた」と県農畜産振興課の鈴木長彦(たけひこ)課長。
だが、先月15日に大館保健所から「偽装」の一報。比内地鶏の生産を推進する同課には「そんなはずはない!」と悲鳴に近い驚きの声があがったという。立ち入り調査で全容が明らかになるに従い、驚きは落胆に変わっていった。
県は自ら開発した比内地鶏のヒナを生産者に配布し、飼育用ビニールハウスの購入に補助金をつけて量産体制を整備。県主導でブランド化を進めてきた。
出荷数はこの10年間で3倍以上の約72万羽に達し、5月には特許庁の地域団体商標にも登録。当時、県は「平成22年には名古屋コーチンと並ぶ100万羽の出荷数を目指す」と意気込んでいた。その中での偽装発覚。
大増産の一方で、公的認証制度などブランドを保護する政策が後れをとり「思わぬ落とし穴が生まれていた」(県幹部)ことに気付かぬまま、偽装を許すことになった。
「比内地鶏には行政が深くかかわっていた。公的な認証があっても良かったはず」とは、消費者からの苦情の矢面に立たされた百貨店の思いだ。
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県は現在、寺田典城知事の「1カ月以内に目途をつける」の号令のもと、ブランド保護を急いでいる。
関係先に、本物の比内地鶏であることの確認書を交付し、知事や副知事自ら「信頼回復とおわびのための全国行脚」の予算を、今月の臨時県議会に提出。
同時に県は、比内地鶏の生産から流通までの履歴を確認できるトレーサビリティー制度導入の検討も本格的に始めた。「比内鶏」社のような偽装を防ぐため、加工品についても同制度による認証を行いたい考えだ。
だが、生肉の認証はともかく、加工品の認証がどこまで可能かをめぐり、関係者から疑問の声が出ていて、制度導入には少し時間がかかりそうな気配が漂っている。
「産地ブランド商品は『これは本物』という口約束だけでは不十分。偽装防止の手立てが必要」とは前述の百貨店。県は「業者の性善説を性悪説に転換した」というが、事態収束の見通しはまだ立っていない。